静岡県磐田市の中学校で花壇に咲くマリーゴールド。ちょっと変わった育て方が成功しました。
<竜洋中学校園芸部顧問 大庭康紀先生>
「びっくりしました。TF-METALさんの(肥料)をまいたらどんどん細かいつぼみも出てきて花の数が非常に多くなりました」
この花壇にまかれた白っぽい肥料。意外なものから作られています。
湖西市に本社を置く自動車用シートの部品メーカー「TF-METAL」。スライドレールの組み立てや塗装を担う工場です。
<モノづくり本部 生産部門製造部スライド組立課 竹腰心組長>
「塗装をする前に、色を塗る時に表面をざらざらにしたいというのと、さびに強くしたいというところで、リン酸処理を行っております」
この工場では塗装をしやすくしたり、さびに強くしたりするため、スライドレールにリン酸で薄い皮膜を作るリン酸処理を行います。この後に行う洗浄の工程では、1日で約13トンの廃水が発生します。
<モノづくり本部 生産部門製造部スライド組立課 竹腰心組長>
「決して汚れているというわけではなくて、あくまで前処理で使った『リン酸』を高めの濃度で含んだ水」
植物を育てる肥料には、根を育てる「カリウム」、茎や葉を大きくする「チッソ」、花や実の付き方を大きくする「リン酸」と大きく3つの成分が含まれます。リン酸はほとんど輸入に頼っており、廃水からリン酸を取り出し肥料にできれば、ゴミを減らすだけでなくリン酸も再利用できると考えました。
<モノづくり本部 生産部門製造部スライド組立課 竹腰心組長>
「凝集剤が入ります。これが入ると…だんだん小さい粒が大きくなっていくのが分かりますかね?下の方にリン酸の粒が重さを持って沈み、上は透明な水成分が残る。リン酸がカルシウムと化合物を作って落ちると言ったイメージ(で分離させ作ります)」
こうした比較的、簡単な仕組みでリンを取り出すことに成功。これまでは「産業廃棄物」として、年間4.5トンを200万円ほどかけて埋め立て場に捨てられていた廃水が肥しに変わったのです。
肥料の名前は「工場の恵み」。本来捨てるだけのゴミ「廃水」がゼロになるだけでなく、命を育む「恵み」になりました。
<モノづくり本部 生産部門製造部スライド組み立て課 竹腰心組長>
「材料単位、これはリン酸から、これはカルシウムからできてるっていう風に細かく分類して、もちろん無害化してやっていけば、どんなものでも資源になるっていうのはすごく思っていて」
地元の大学では、この肥料を効果的に活用する研究を進めています。
<県立農林環境専門職大学短期大学部 坂口良介講師>
「いままで使っていた肥料と遜色がなかったので、肥料としても非常に有効」
肥料の原料になるリンをめぐっては、中国が輸出制限をかけたことから価格が急騰しました。このままでは日本全体で肥料が足りなくなる恐れがあり、国内でリンを調達するという技術は日本の農業を守ることにもつながります。