2021年の土石流で被害を受けた静岡県熱海市伊豆山の一部地域は、警戒区域に指定されていて、人が住むことはできませんが、9月1日にその解除が予定されています。元の自宅で住みたいと住民のみなさん奮闘しているわけですが、そのひとりの小松昭一さんに話を伺います。
まずは1枚の写真をご紹介させてください。小松さんの被災直後の自宅の写真ですが、外壁が激しく崩れている様子がわかります。そして、現在の様子が後ろの茶色の建物になるわけですが、小松さん、現在復旧はどの程度進んだでしょうか?
<小松昭一さん>
「緊急保全工事という制度があって、2022年4月25日に通知が来まして、すぐ工事に入ろうと思ったんですけども、帰れる日がいつかわからないということだったので、ちょっと様子を見ながらおりました。それで9月1日に警戒区域が解除される予定だということで、それに合わせて、家に帰りたいということで、まず家を直さなきゃいけないということで、2023年4月から6月の半ばにかけて半壊となっていた家の中の被害に遭ったところの復旧工事を行いました。それも6月の半ばには完成して、いまはご覧の通り、外壁も塗り替えられて、家に帰られるような状態になってるということですね」
<滝澤悠希キャスター>
少しずつ綺麗になっている様子がわかりますが、生活再建を巡る市の方針は、二転三転している状況です。住民も困惑しています。
小松さんは2年前から熱海市内の市営住宅で夫婦2人で避難生活を続けています。
<小松さん>
「土石流災害の関連記事を全部切り抜いて、こういう形で全部残している。これをもとにして、話するとしてもトンチンカンな話をしないよう全部とっておいて、17項目にわたって全部書き留めているんですよ」
<神谷修二カメラマン>
「ご自分で書いたんですかこれ?」
<小松さん>
「そうですね。だって誰もやってくんないもの」
小松さんは被災直後から自宅に戻るため、必要な情報を日々ノートに書き留め、帰還する日に備えてきました。
<小松さん>
「不便に感じたのは、人との交流がないっていうことですよ。情報が入ってこない。自分が行動を起そうと思っても、情報がない、人との交流がないとなると自分ひとりで判断して決めなきゃならないでしょ」
伊豆山を離れての避難生活では、近所との交流も少なく、帰還するために必要な情報がなかなか入ってこないのです。小松さんは、急に方針を変更した熱海市に振り回されていると嘆きます。
以前、市は被災した宅地を一旦、市が買い取り、分譲する方式を住民に示していましたが、2023年5月末に被災者自ら宅地を造成し、復旧費用の9割を補助すると方針転換。住民説明会では、二転三転する市の方針に小松さんもたまらず、説明を求めました。
<小松さん>
「帰るまでに宅地の復旧工事をして、帰れるようにしたいんですよ。申請がいつ頃だったらできるのか、いま言っているのは、市議会の承認を得てって言っているといつになるんですか」
<熱海市 濱島憲一郎復興調整室長>
「この時点ではお知らせできないので、申し訳ありません」
<小松さん>
「年はドンドン過ぎていく。体力は落ちていく。ここで死を待つのか。行政はどう見てるんですかって言いたいですよ。わたしのいまの心境としては、家を直して帰る。そこまでは踏ん張って頑張る。その気力があるからまだもっているんですね」
<滝澤キャスター>
「小松さんのノートです。丁寧にびっしりと文字が書かれています。あらためて元の自宅でどんな生活を送りたいですか」
<小松さん>
「見ての通り現状は惨憺たるものです。家にいつ帰れるのか、いつ復旧工事が進むのか、まったく決定されているものがないという状況の中で、とにかく早く帰りたい。それには家を直して帰ろうとしてきたわけですから、ぜひ行政の方が、それに向かった方針なり、業務の進め方というものを考えていただいて、ぜひ、被災者の気持ちに寄り添った温かい支援をしていただきたい」
<滝澤キャスター>
「もちろん戻りたくても戻れない人もいるわけですが、小松さんのように切に帰りたいと願っている人もいます。行政には、住民に寄り添った対応が求められます」