私たちの生活に最も欠かせない資源が水です。日本に住む私たちは、水はただで手に入ると思いがちですが、世界では最も深刻な問題の一つが水不足。この問題をクリアする画期的な技術の研究が島田市のモデルハウスで進められています。
いま、飲んだ水は何の変哲もない水道水に見えますが…。
<TOKAI 事業開発推進本部 武内淳部長>「今、流れているのは水道水ではなく、雨水を浄化して作り出された水」
島田市の住宅街に建つOTSハウス。「その場で」の英語の頭文字を取ったこの家は、雨水と特殊な循環システムを駆使して水を自給自足する家です。独特な外観は敷地内に降った雨を地下に埋められたタンクに貯めるために設計されています。蓄えられた雨水は家に備え付けられた浄水設備で飲める水に変えるのです。
<TOKAI 事業開発推進本部 武内淳部長>「いわゆるミニ浄水場といった感じですかね。機械室と我々は呼んでいます」
さらに、この設備ではもう一つ大きな仕掛けが隠されていました。
<TOKAI 事業開発推進本部 武内淳部長>「下の段が生活排水をリサイクルして、きれいな水にするための装置。ROろ過装置と言われるもの。奥に見える筒状のもの。あの中にROろ過膜というものがある」
このバウムクーヘンのような筒がROろ過膜。この中を汚れた水が通ると、膜が不純物を取り除いてくれるという仕組みです。島田のOTSハウスで現在、実証実験が進められているROろ過膜は、長野県の信州大学が開発しました。カギとなるのは「カーボンナノチューブ」。1mmの100万分の1の炭素繊維をこれまで使われていた石油由来の繊維に混ぜることで、表面がより滑らかになるなどして、汚れが付きにくい膜になるといいます。
<信州大学 竹内健司准教授>「どのように膜の表面に汚れがついているか過程を見ることができます」
緑色に光っているのが汚れです。信州大学の開発した膜は、市販のものに比べると汚れが半分以下に抑えられました。信州大学の開発した膜は、不純物を取り除く精度が高いうえに膜を交換する回数が他のROろ過膜に比べて少なくなるというメリットが期待されています。この技術は世界の水不足にも対応できる技術になると期待されています。
<信州大学 遠藤守信特別特任教授>「年間2000万人が汚れた水で命を落とす、そういう深刻な状況が出ている。2030年ごろからそういう現象がもっともっと顕在化する」
OECD=世界経済開発協力機構によりますと、2050年には世界の人口の4割以上に当たる39億人が深刻な水不足に陥ると予測されています。雨水や生活排水の再利用を進めながら、水の無駄遣いをどう減らすかも今後の課題です。
<TOKAI 事業開発推進本部 武内淳部長>「雨水はこのお宅に降った水ですから、外から水を必要としていないという意味ではゼロリッターハウスと言っていいんじゃないか」
世界的な気候変動は私たちの水にも影響を与える可能性があり、きれいな水を確保する技術は海外だけでなく、日本の生活をも変えるかもしれません。