津波から、いち早く逃げるにはどうすればいいのか。静岡県沼津市の海沿いの町内会から新たなアイデアが生まれました。ちょっとした事前の備えで高齢者や子どもの命を守ろうとしています。
<沼津市戸田奥南区 山田英輝区長>
Q.ここが避難場所ですか?
「ここで海抜4.8mあるんで、津波の大きさによっては4.8mだと心もとないかもしれないです。ただ、こっちに階段があって上の方に登っていくこともできますね」
駿河湾に面した沼津市戸田地区です。港の近くにある寺、三光寺は津波の避難場所の1つになっています。海抜は4.8m。南海トラフ巨大地震では5m以上の津波が想定されていることから、まずは寺の裏山に避難することにしています。
<沼津市戸田奥南区 山田英輝区長>
「大昔の津波の時には、たぶん江戸時代かな、この辺まで水が来たという話ですから」
第1波の到達までの猶予はわずか5分です。
2022年12月、戸田地区で行われた「津波避難訓練」です。住民たちは寺のほか、津波避難タワーなどに逃げました。
<連合自治会長>
「上まで上がれる人は上がってください」
訓練では小型の発信器を身につけ、避難にかかった時間を計測しました。本格的な訓練はコロナ禍以来、3年ぶり。防災意識の低下が懸念されましたが、2019年の訓練とデータを比較すると意外な結果が出ました。
<東京大学生産技術研究所 杉山高志特別研究員>
「5分以内に避難完了できていた人が(3年前は)半分以下だったのが、今回の訓練だと半分以上になっているんですね。これって大きな大きな変化ですよね。区長さんが頑張れよ、本気で頑張れよと、ひとこと言うだけで、これだけ変わるんだということが分かると思います」
第1波が到達する5分以内に避難できた人の割合が、データをとった2つの町内会とも大きく向上しました。自治会長や区長の積極的な声掛けで結果が改善したとみられます。しかし、課題もあります。
<連合自治会長>
「隣に車椅子の方が住んでいる。今回訓練をやってみますかと言ったら、その人はいいと言う。隣近所のことは把握しているが、大変だと言う人はいっぱいいると思う」
高齢者など避難に10分以上かかった人が1つの町内会で16%、もう1つの町内会で37%もいたのです。1分1秒でも早く逃げるには非常持ち出し袋を手にする余裕すらないかもしれない。危機感をみんなで共有したところ、新たなアイデアが生まれました。
<住民の話し合い>
「今度防災倉庫を作ったじゃん」
「(避難場所の寺から)歩けば3分ぐらいで行けるところ。そういう所に非常持ち出し袋を置ける可能性もありますよね。例えば、薬とか。個人個人違いますからね」
「いいアイディアです」
<沼津市戸田奥南区 山田英輝区長>
「こちらが防災倉庫です。2022年の暮れにこの倉庫が建ったばかりなので、ちゃんと中の防災用品を全部収納するところまではいっていない。希望があれば、ここに個人の物も備蓄しておけばいいかなと思っている」
高齢者ならば普段飲んでいる薬を、小さな子どもがいる家庭ならミルクやおむつを事前に置いておいておく。そんな防災倉庫の中身づくりを今後、進めることになります。
沼津市戸田地区の防災倉庫は、倉庫に行くまでの通り道には狭い場所が多く、周りの建物の耐震性にも不安があるそうです。そこで、迂回路として山道を整備するなどの対策もして災害に備えたいと町内会では考えています。