近年、全国各地で相次ぐ災害。被災した人の暮らしを支える空間として、いま「動く家」トレーラーハウスが注目されています。

9月5日に静岡県牧之原市で発生した国内最大級の竜巻は甚大な被害をもたらしました。細江地区に住む平賀正廣さんです。自宅は屋根が飛ばされ、牧之原市から「大規模半壊」の判定を受けました。

<平賀正廣さん>
「今は、布団に寝ています。自分の布団などは濡れてしまって使えなくなったので、(知人の)割烹旅館の女将さんが布団を持ってきてくれた」

平賀さんは被災してから一週間ほど、妻と車で寝泊まりしていました。

<平賀さん>
「(シートを)倒すって言ってもこれぐらいで寝ていた。荷物が後ろにいっぱい積んであったから。熟睡はしていなかった」

被災者の生活支援として、今、全国の自治体が「トレーラーハウス」に関心を寄せています。牧之原市でトレーラーハウスの製造・販売をしている会社です。

<大西晴季記者>
「失礼します。広いですね」

<勝栄 増田真介課長>
「一番奥の方から、ベッドスペースになっていて、ここへベッドを2つ置いていただくか、とか2段ベッドを2つ置いて4人で暮らすというのもありですね」

システムキッチンや温水洗浄便座付きのトイレも完備。一般的な住宅とほぼ同じ作りでペットと暮らすこともできます。災害時におけるトレーラーハウスの最大のメリットは設置のスピードです。

<増田課長>
「もともと完成されたものを運ぶだけなので、設置するのに時間がかからない。仮設住宅として役目を終えた時に別の場所に移して引き続き別の用途としてお使いいただくことができる」

勝栄は2015年から「日本RV・トレーラーハウス協会」に加盟。協会では50台以上を備蓄していて、2024年1月の能登半島地震では被災地の仮設住宅や支援者の宿泊施設として提供し、現在も使われています。

<増田課長>
「(被災者が)早くストレスから解放していただくというところが一番かなと思う」

2021年、牧之原市は協会と防災協定を締結しました。市は、今回の竜巻被害で、プレハブ型の仮設住宅やトレーラーハウス用に約6000平方メートルの市有地を確保していて、現在、ニーズを調査しています。

専門家はトレーラーハウスへの関心が高まる背景には、従来のプレハブ仮設住宅の建築費の高騰があるといいます。

<東京都立大学 土屋真准教授>
「地震や水害が起こるたびにプレハブ型の応急仮設住宅の仕様の問題点がクローズアップされて、仮設なはずだが、割とコストがかかる。しかも、使い終わった多くのものが壊されてしまう。トレーラーハウスだと使いまわせるので、コスト効率は高い」

課題はトレーラーハウスの「備蓄台数の確保」です。この会社は牧之原市静波には4台を配備して普段は宿泊施設として使っています。

<土屋准教授>
「例えばトイレに使われているとか、キャンプ場で使われているとか移住体験施設に使うとか、(導入)システムを考える上では、災害時にどう使うかというよりは、普段どう使っているかが大事」

「動く住まい」は、災害時の生活拠点として普及しつつあります。水道や電気といったライフラインの整備には工事が必要なため、より早く支援を届けるためには、県内各地にあらかじめトレーラーハウスを配備し、被災後すぐに現地に持ち込める体制をつくることも重要なポイントといえそうです。