2021年7月、静岡県熱海市で起きた土石流災害で、起点にあった盛り土の造成をめぐり、当時対応にあたった熱海市職員やOBへのヒアリングの結果が、4月26日公開されました。
熱海市職員やOBなど17人のヒアリングをまとめた報告書面
この報告書では、静岡県の対応について不満が綴られましたが、今回の土石流をめぐって、もう一つ疑問視されているのが、熱海市が権限を持っていた「措置命令」を出さなかったことです。

「措置命令」を出せば、盛り土の造成業者に対して、防災工事を命じることができます。熱海市は2011年6月、この措置命令を出すことをいったん決めました。

ところが7月、盛り土の業者側が防災工事を始めたため、状況を見守ることにします。8月には、業者がのり面を整える工事を行ったと熱海市に報告していますが、その後も小規模な土砂崩れが起きていました。

十分な防災対策は完成しないまま、熱海市は「一定の安定性が確保できている」と判断し、措置命令の発出を見送りました。これについて、26日、熱海市長が見解を述べました。
ヒアリング結果公開にあわせて開かれた会見=26日、熱海市役所

斉藤栄 熱海市長
「(措置命令を出さなかったのは)違反、違法、不適切な状況は、実質的に改善されている状況であると捉えていた」


また、熱海市は報告書の中で、「人身災害につながるとは考えていなかった」と繰り返し弁明しています。

熱海市の対応について、遺族は。

被害者の会 瀬下雄史会長
「人的被害が出ないと思っていたというが(熱海市の)認識が甘い。責任回避という姿勢が見えますし、当事者意識がない」
行政が効果的な手を打てぬまま大規模崩壊した盛り土=熱海市伊豆山

熱海土石流災害からまもなく10か月。熱海市の職員などへのヒアリングをまとめた報告書は、静岡県の第三者委員会に提出されていて、5月中旬には最終報告が発表される予定です。