高級食材「エビイモ」の生産量日本一を誇る静岡県磐田市では、生産者を増やそうと先輩農家とマッチングさせる市独自の支援事業を打ち出しています。この事業を活用し、先輩農家から研修を受けている新米エビイモ農家を追いました。

2024年4月、磐田市で移住生活を始めた一ノ瀬豊さんは、福岡県出身です。

<新米エビイモ農家 一ノ瀬豊さん(44)>
「この一年、体力付けるのも課題ですので、やり抜くことを目標にして地道に頑張ります」

移住を決断させたのは磐田市の独自事業でした。

<草地博昭 磐田市長>
「磐田市特産品エビイモ承継事業の趣旨に適合することを認め令和6年度の研修生として、認定をします」

<新米エビイモ農家 一ノ瀬豊さん(44)>
「頑張ります」

一ノ瀬さんは大学を卒業後、大手鉄鋼メーカーで広報や事務などを務めたサラリーマンでした。農業へのあこがれから、2023年春に会社を退職し、縁もゆかりもない磐田市への移住を決断。

<新米エビイモ農家 一ノ瀬豊さん(44)>
「なぜエビイモかというと、偉大な先人の方々が気づき上げてきたブランド力や商品力に魅力を感じて最終的にエビイモをつくりたいと決意した」

エビのようにまがり、縞模様が特徴の「エビイモ」。きめ細かな肉質にクリーミーな味わい、高級食材として知られます。「エビイモ承継事業」事業は、磐田市や地元のJAが農家と、農家を目指す人をマッチングさせ、1年間、研修を受ける仕組みです。研修期間の住宅費や生活費の一部を補助します。

<磐田市農林水産課 原田南主事>
「何か手を打たないと、このままでは産地として維持できないという危機感から制度が始まった」

事業導入の背景にあるのは、急激な生産者の減少です。生産者の数は、高齢化などに伴い20年で半減、生産量は3分の1程度にまで減少しています。

<磐田市農林水産課 原田南主事>
「エビイモは栽培方法が特殊で、機械化できない部分があったりしていて、機械化できない点などから担い手の確保が難しい」

一ノ瀬さんを指導するのは、新貝育夫さんです。エビイモ栽培は、一株ずつ手作業での過程が多く、手間のかけ方次第で出来が変わるといいます。一ノ瀬さんは新貝さんのもとで苗の植え付けから収穫も学んでいます。植え付けから1か月あまり、イモを大きくするために不要な葉や芽を選び、手作業で取り除きます。

<新米エビイモ農家 一ノ瀬豊さん(44)>
「こんな風に1株1株間近に立って、丁寧に草や葉を取り除くのは珍しいと思う、1つの作品をつくっているような感覚になる」

一ノ瀬さんは研修期間、家族と離れ、1人暮らしをしています。独立したときに活かせるようデータを残しています。栽培技術をほかの生産者に、そして次世代につなぐためです。

<新米エビイモ農家 一ノ瀬豊さん(44)>
「色んな人の蓄積が、磐田市のエビイモの情報共有なり、今後の未来につながっていく」

生産者を増やしながらエビイモの産地を守る承継事業、研修生の挑戦は続きます。