被害者支援の立場から広がった対象 不同意とは…

<佐野弁護士>
しかし、それでも、暴力や脅迫という手段以外にも、被害者が抵抗困難な状態にして性行為に及ぶというケースが残っていました。被害者支援の立場からすると、それではまだ不十分ということで、令和5年の改正につながり、不同意性交等罪・不同意わいせつ罪という罪名が作られました。

不同意性交等罪とは、法律上のいくつかの事情を原因として、「同意しない意思を形成、表明又は全うすることが困難な状態」、つまり「ノー」と言えない状況にさせて、あるいはそのような状況に乗じて、その相手と性交等を行った場合に成立する罪と対象が広がりました。

Q. ここで広がった対象とは?

<佐野弁護士>
「不同意」の原因事情として、暴力、脅迫に加え、
・ 精神的、身体的な障害を生じさせること
・ アルコールや薬物を摂取させること
・ 眠っているなど、意識がはっきりしていない状態であること
・ 拒絶するいとまを与えないこと
・ 恐怖、驚がくさせること
・ 虐待による心理的反応があること
・ 経済的、社会的関係の地位に基づく影響力で受ける不利益を憂慮していること

以上のことが法律で定められ、処罰対象となる「不同意」を広くとらえることで、“同意されていないものは犯罪”という姿勢が強く打ち出されました。何が罪になるのかはっきりさせるのが刑法の基本なので、今回はかなり広い対象になりました。