長野県佐久市で、2015年3月に中学3年生の和田樹生さん当時15歳が車にはねられて死亡した事故で、最高裁は7日、直ちに救護・報告義務を果たさなかったとしてひき逃げの罪に問われた男に対し、2審の東京高裁が無罪とした判決を破棄した上で被告の控訴を棄却しました。
1審の懲役6か月の判決が確定することになります。
判決理由で、最高裁は、被害者に重篤なけがを負わせた場合、発見することをすべきだが、被告は無関係なコンビニに行っており、必要な措置を講じていない。その時点で、道路交通法の救護義務違反にあたるとしました。

事故と裁判の経緯
1、2審判決によりますと、被告は2015年3月23日午後10時7分ごろ、佐久市のJR佐久平駅の北側で横断歩道を歩いていた和田さんを車ではねて、多発外傷を負わせ死亡させました。
事故の後、車を止めて和田さんを捜したが見つからず、飲酒を隠すためにおよそ50メートル離れたコンビニで口臭防止剤を購入し服用し、再び現場に向かったとされます。
裁判では、事故後に現場を離れた被告の行動が、道路交通法の救護・報告義務違反にあたるかが争点となり、2022年11月の1審長野地裁の判決では「違反に当たる」として懲役6か月の実刑判決としました。
一方、23年9月の2審東京高裁では、被告がコンビニに立ち寄るなどした時間は1分あまりで、和田さんを発見後に人工呼吸をしていることなどから、救護する意思を保持し続けていたとして逆転無罪を言い渡しました。
2審無罪判決「こんな国に産んでごめんね」
無罪判決を受けて母の真理さんは「樹生にかける言葉が見つからない。刑が確定するようなことがあればこんな国に産んでごめんねとしか言えない」と話し、検察側が最高裁へ上告していました。

最高裁の弁論で、検察側は道交法の「直ちに」とは「時間的にすぐ」のことで「救護などの措置以外の行為に時間を費やしてはならない」とした判例を挙げて、二審判決は法令の解釈と適用を誤っていることから、破棄して、最高裁が自ら判決を下す「自判」を求めました。
一方、弁護側は、被告は事故発生後、直ちに被害者を捜索し、コンビニから戻って被害者を見つけてからは救護しており、救護意思があったなどとして無罪を主張していました。
樹生さんの父・善光さんと母・真理さんは、ひき逃げの罪での起訴を求めて、独自調査を行ってきました。
両親の訴えなどもあり、裁判は過失運転致死やスピード違反などの罪をめぐり3度行われるという異例の経過をたどりました。
7日の最高裁判決を母親の真理さんは、樹生さんの遺影を抱いて聞いていました。