■島の歴史を伝え、「訴えかける」作品

島の歴史を伝える芸術作品、「Nさんの人生・大島七十年」です。
作者の田島征三さんが、交流のあるNさんから隔離された島での生活を聞き、それを立体作品として作り上げました。
「(これが全てNさんの人生?)そうですね。Nさんの人生を、それぞれの部屋ごとに分けて表現をして、昔は多い時には700人もの入所者が暮らしていた時代があって、軽症者が重症者を看病したりしてお互い助け合いながらみなさんおられました。」

トイレも足りず木製の便器を当時作らされたというNさん。子どもを持つことも許されなかった悲しみを作者の田島さんに語ったのは、野村さんでした。

(ハンセン病回復者 野村 宏 さん)
「昔は大島に入ったら二度と帰ることはできなかった。”人間を捨てた島”ですからね。そこの中に私たちは閉じ込められたんですから。」
作品が、見る人の心に強く訴えます。

(こえびネットワーク 笹川 尚子 さん)
「こういう作品を通して伝える、っていう意味は大きな意味を持っていて、これを見ることによっていろんな捉え方をしてくださると思います。それは過去の話ではなく、今いらっしゃる方の話だということを知ってもらいたい。」
作品の一つ一つが島の歴史を語りかけてきます。
(来場者)
「今のコロナ禍とかも…いろいろあって隔離されていた方がいたということがなんかちょっと…いろんな想像が膨らみました」
「普段だとなかなか来ることもできないし、あまり考えることもないですけど、そういうことを考えるいい機会になります。」

隔離された島の事を次の世代に伝える。作品は今も島で暮らす人々の代弁者です。

(ハンセン病回復者 野村 宏 さん)
「大島は”人間を捨てた島”ですよ。だからあの作品が一つの皆さんの胸に刻んでもらって覚えていてもらえたらありがたいと思うし、大島ではそれが一番大事なことだと思う。」
ハンセン病回復者の思いがこめられた作品から何を受け取るのか。かつて隔離されていた島での芸術祭が、人々の心に問いかけます。