人が設置した巣箱を利用することも
「春になると、ヤマガラはつがいで繁殖期に入ります。巣作りは『木造』を好むようで、木の洞や古いキツツキの巣、あるいは人が設置した巣箱を利用します。
オスは巣の候補地を探し、気に入った場所を見つけるとメスを呼んでプロポーズ。メスが新居を気に入ると、プロポーズ成功。
つがいで巣作りを始めます。コケや動物の毛、羽毛などを集めて丁寧に敷きつめ、柔らかな巣をつくります。
やがてメスが3〜8個の卵を産み、抱卵している間、オスがせっせとエサを運びます。
ヒナが孵ると、両親は協力してヒナのために昆虫などを取りに出かけ、20日前後で巣立ちます。
親鳥が警戒しながらも懸命にエサを運ぶ姿は、春の森の生命力を感じさせます」

「ヒナには優しいヤマガラですが、性格は意外と気が強く、縄張り意識も強めです。エサ台では自分の餌場だと覚えると、他の小鳥を追い払ってエサを独占することもあります。
けれど、そんな小さな争いも自然の一部。生き抜くための知恵とたくましさが、そこにはあります。春先、庭に木々があり、巣箱を設置したりヒマワリの種を置いたりすると、近くに住むヤマガラが新居に引っ越してくるかもしれません。
最初は警戒しますが、しだいに距離を縮めてくれる個体もいます。巣立ったあとも、毎年同じ場所に戻ってくることがあり、うまくいけば実家のように感じてくれるのかもしれません」
見分けるポイントはオレンジの腹と黒い頭

「賢く、人懐っこく、そしてたくましいヤマガラ。季節の移ろいとともに変わるその行動を観察すれば、身近な自然が少し違って見えてくるはずです。
少し緑のある場所で、頭上から鳴き声が聞こえ、枝の上で木の実をくわえてこちらを見つめる、オレンジ色のお腹と黒い頭の小鳥を見かけたら、それはきっとヤマガラです。
あちこちにいる鳥ですので、ひょっとすると出会えるかもしれませんね」
【画像①~⑥】の撮影は、青江隆晴さんです。