■なぜ自殺を…「どこかで誰かに助けてもらいたい、という気持ちがあった」


発見されなかったら、落としていたかもしれない命。なぜ、死のうと思ったのか。

30代の女性は重い口を開けてくれました。同居する家族から言葉の虐待を受け続けてきた彼女は、心の病を患い、家に子どもを置いて1人でこの場所にたどり着きました。


(自殺を企図した女性)
「日頃のいろんなストレスがたまって、物事を悪く捉えてしまったりとか、まわりに相談することも出来ずに周りが見えなくなって、『死ぬんだ』ってことばかり頭にあって」


「(断崖絶壁を)目の前にすると『死に対する恐怖感』が出てきて、、、子どものこととか『自分がいなくなったらどうなるんだろう』とか不安になって、死んではいけないという気持ちにもなって」


「どこかで誰かに助けてもらいたい、というのもありました」

(茂 幸雄さん)
「みんな被害者なんですね。職場や家や、、、いろんな人に追い詰められてしまうんですね。何かしら、取り巻いている人が『死に追い詰めてしまっている』と思うんですね」

■茂幸雄さん 警察署時代の「無念」と「決意」 


もともとは、地元の警察署の副署長だった茂さん。自殺防止活動に本格的に取組むきっかけとなったのは、現職時代に自殺を引き留めた、年配の男女から送られてきた手紙でした。


(茂幸雄さん)
「広告紙のうしろに3枚、綴られているんです」

「助けてくれて有難う」・・・お礼の言葉も添えられた、遺書でした。


借金を抱えていた2人は、その後行政に支援を求めたものの、どこにも相手にされず、茂さんが救出した4日後に新潟県内で心中しました。

(茂幸雄さん)
「『人生もここで疲れました。もう私らのようなもん、東尋坊から出ないようにしてほしい』って」


「死にたい人は誰もいないんよね、『誰か声を上げる人がいなければ』という思いもあって」


これまで18年間で755人を引きとめ、再出発を手伝ってきました。それでも・・・死を選び、ここにたどり着く人は後を絶ちません。


(電話を掛ける茂幸雄さん)
「お母さんねぇ、お嬢さんのね、バックがあるんですよ。自殺の恐れあったんですか?」

■「2万1007人」という数字 1人でも減らしたい、という願いから

昨年1年間の自殺者数は2万1007人でした(警察庁調べ)。


2003年の3万4427人をピークに年々 “減少傾向”にありますが、果たしてこれは“喜ばしいこと”と言えるのか。この数字の中の一人一人それぞれが大切な命であり、家族がいて仲間がいて、それだけの悲しみがこの数字には籠められていると思います。

どうすれば自殺を減らせるのか、なくすことが出来るのか、死なずにすむのか。RSK山陽放送が取材した東尋坊での「生」と「死」...揺れ動く命の攻防への密着を通じて、「生きる道を選んでほしい」という願いを込めてシリーズでお伝えしています。

■悩みを抱えている方は


もし、いま悩んでいるという方がいたら「まもろうよこころ」と検索してみてください。厚生労働省が相談窓口をまとめたホームページがあります。一人で抱え込まずに一度、相談してみてほしいと思います。
(#3に続く)