賛否の声を乗り越えて「人生を後悔という文字に置き換えない」

リモート取材のあと、蓮井さんからメールが届きました。

「あのあと、ピアノは弾けないけれど、まだこうしてやれることがあると、みんなで泣きました」

そして、闘病中の高橋さんと蓮井さんのこれまでを伝える記事を7月12日に公開すると、「この記事を読んで、改めて生きることの意味を再考しています」と、あたたかい感謝の言葉とともにメールが届きました。

大切な想いを、筆者に託してくれた2人。
その想いを記事として公開することに、実は、ためらいがありました。
一番心配だったのは、高橋さんの選択に、賛否の声が上がると予想されたことです。

公開後、コメント欄にはいろんな意見が書き込まれ、高橋さんが胸を痛めているのではないかと心配でした。

7月14日、蓮井さんに「岡山パリ祭」で会ったときに様子をうかがうと、

「私も心配したんだけど、ゆりは大丈夫だって。なんとも思わないって」

と笑顔で答えてくれました。

「ゆりからは何があってもずっと歌い続けてほしいと言われています」

悪意からではなく善意から「こうしたほうがよかったのでは」「こうすべきだったのでは」という意見があるのかもしれません。

筆者が画面越しに会った高橋さんの笑顔は、これまでのどんな選択も、ゆるぎなく間違いではなかったことを物語っているようでした。

高橋さんと蓮井さんは、最近、こう考えているといいます。

「人生を『後悔』という文字に置き換えるのではなく、死ぬ瞬間までやりたいことがある、やりたいことがあるまま死ねるというのもいいんじゃない?」