たまたま訪れた展覧会で衝撃が走った

そんなある日、たまたま訪れた展覧会で衝撃が走りました。脳腫瘍により30歳でこの世を去った画家・野田英夫さんの作品メリーゴーラウンドです。
(かがみの近代美術館 辻󠄀本高廣館長)
「最後は目も見えなくなって、まぶたが垂れ下がってくるのを絆創膏で止めて描き続けられたと。そういうことを知って画を見たら楽しそうに子どもたちがメリーゴーラウンンドに乗っている絵なんですけれども逆に楽しいはずの子どもたちの顔が悲しく見えてくる。

やっぱり絵は『人を写す鏡』というか。『やっぱりいつまでも自分の側に置きたい』そんな絵をこれからは求めていこうと」

美術館にはその後、手に入れた野田さんのデッサンが展示されています。

(かがみの近代美術館 辻󠄀本高廣館長)
「私も毎日見ていて、当時も思い出すし。野田英夫さんを偲べる」

こちらはそんな辻󠄀本館長が大切にしている思いを象徴する作品です。

(かがみの近代美術館 辻󠄀本高廣館長)
「紙がシワよってボロボロなんです。『価値が無い』ということで粗末に扱われたと。要するにこの方無名でなくなった作家さんなんです」

作品数がきわめて少ない幻の作家。何とか手に入れようと30年間も探し求めました。

(かがみの近代美術館 辻󠄀本高廣館長)
「『俺のところにやっと来たか』という愛しい気分になりました。『これを側に置いて暮らせる』そういう嬉しさがあった」