TSMCの周辺で進む道路整備の最前線です。
交通渋滞解消への動きですが、その一方で道路の用地をめぐる問題も起きています。
熊本と大分を結ぶ全長120キロの中九州横断道路。このうち、熊本市や合志市、大津町を通る区間、13.8キロの大津熊本道路の工事が始まりました。

記者「合志市野々島地区です。道路は熊本市方面から大津町方面に向かって建設予定で、現在基礎工事が行われています」

熊本県合志市では10月から橋脚を造るための基礎工事が行われています。橋脚は来年3月に完成する予定ですがこの区間がいつ開通するかは、まだめどがたっていません。

来年の操業開始に向け着々と工事が進むTSMCの熊本工場。その北側を通る予定の大津熊本道路は周辺の交通渋滞対策としての役割が期待されていて、新たな計画も発表されています。

蒲島知事「合志インターチェンジと大津西インターチェンジの間の新たなインターチェンジの設置」
当初、インターチェンジが2か所設置される計画でしたが、県はTSMCの工場に近い場所にもう1か所インターチェンジの設置を検討することに。

さらに元々設置予定だった合志インターチェンジとTSMC南側の県道を繋ぐ道路を整備し、県道の幅も広げる計画を明らかにしました。

その計画に関して菊陽町で住民説明会が開かれました。
熊本県担当者「セミコンテクノパーク周辺につきましては慢性的な交通渋滞が発生していまして、対策を行うことは喫緊の課題」

県道の幅を6車線に対応できるよう広げることで、自分の土地はどうなるのか。住民から不安の声が上がりました。
帆保畜産 斎藤俊昭 社長「やりやすいように物事を何年もかけて動かしてきているのに対して、道路広げるんでどいて下さいって言われても『はい、そうですね』と言えない部分がある」

そう話すのは大津町や菊陽町などで畜産業を営む斎藤俊昭さんです。
斎藤社長「牛舎抜けると目の前にTSMCが見えてくる」

TSMCの目と鼻の先にある牛舎は斎藤さんにとって祖父から引き継いだ特別な場所です。
斎藤社長「(小さい時に)母親が仕事に来てたので、一緒に付いてきて、エサをやってたりした場所。僕の畜産の原点」

しかし、1年前に牛舎の前を走る県道の拡幅工事が計画されていることを報道で知りました。
斎藤社長「(拡幅工事が)南側にくると、牛舎が大きく関係してくるので、どうしたらいいんだろうと最初思った」
斎藤さんは立ち退きも想定し大津町に代わりの土地を購入しましたが、住民説明会で事業の詳細を知り、愕然としました。
斎藤社長「自分の牛舎が2か所、飼料畑が3か所から4か所程度関係するというのを見たときは嘘でしょ!?って思った」

計画通りならおよそ400頭の牛を移動させなければならず、代わりの土地だけでは収容できません。
さらに牛のエサとなる牧草を栽培する畑も一部が工事の対象となっていますが、どれだけ補償を受けられるか熊本県から回答を得られていません。
斎藤社長「色んなものが発展していくことはすごくいいことですし、協力したいという気持ちはあるけど、そこで生活したり営農したりしてきた私たちの気持ちにもっと寄り添って欲しい」

補償や土地の確保など先の見えない不安な日々が続いています。
斎藤社長「なにはともあれ、1日でも早くすっきりしたい」
