熊本県内で唯一のあるスポーツの女子チームが、2023年、7年ぶりに全国大会に出場しました。目指すは、亡き恩師に捧げる全国大会初勝利です。

午後5時すぎ。日も暮れ始める時間帯からウォーミングアップを始める人たちの姿が…

ーー「何のチームですか?」
「女子アイスホッケーのチームです 」

彼女たちは、氷上の格闘技とも言われるアイスホッケーの選手たち。

熊本唯一の女子アイスホッケーチーム「ホワイトドルフィンズ」です。

中学生から社会人までの10人で構成されるチームは、全日本女子アイスホッケー選手権大会に出場します。7年ぶり2回目の挑戦です。

県内で氷の上で練習ができるのは、アクアドームにリンクが設けられる12月中旬から3月末まで3か月間だけ。

その他の時期は、陸上でのトレーニングや福岡県久留米市のリンクまで遠征して練習するなど決して恵まれた環境とは言えない中、出場を決めた全国の舞台。チームには負けられない理由がありました。

熊野悠帆 選手「監督が連れて行ってくれたのかなと思います。みんなでもう1回行ってこいと言って一緒について来てくれるでしょうし」

本田璃々子 選手「今も天国で全国大会を見守ってほしいし、頑張ってくると伝えたいです」

チームを率いていた桑原賢二(くわはら けんじ)監督。

2022年9月、くも膜下出血のため74歳でこの世を去りました。

30年以上の歴史を持つチームを立ち上げた時から指導してきた桑原監督。小中学生・高校生・女子チーム・国体チーム、全てのカテゴリーの指導にあたり、熊本市スポーツ功労賞も受賞しました。

廣永温美 選手「監督が亡くなって、シーズンが始まって悲しんでいる暇もない。監督がいなくなったことがわかっていないというか…」

チームは今も、桑原監督と共に戦っています。

試合の時にはベンチに桑原監督の遺影を置き、試合前や得点を決めた時にはタッチ。

さらに、桑原監督が生前、力を注いだジュニアチームの若手も育っています。ゴールキーパーの古平結明(ふるひら ゆうみん)選手、チーム最年少の中学2年生です。

この日、一緒に練習した男子大学生が放つ150キロ近いスピードのシュートや浮かせたシュートも次々セーブ。

古平結明 選手「怖いと思ったことは一度も無くて、強いシュートの方が頑張ろうと思えます」

6歳でアイスホッケーを始め、10歳の時に桑原監督に素質を見いだされゴールキーパーに。

桑原前監督がアメリカのプロリーグNHLの練習を研究し古平選手用にアレンジ。投げたテニスボールを同時にキャッチする練習などで、反射神経・動体視力を鍛えました。陸上でも氷上でも、まさに二人三脚で力をつけてきました。

教えを守り続け、全国大会後には16歳以下の代表候補選手が集まるエリートキャンプに招集されるまでに。

亡き監督ため、チームのため全国大会でもゴールを守ります。

古平結明 選手「亡くなった監督が見守ってくれていると信じて、しっかり止められるように頑張ります」

ホワイトドルフィンズが出場した全日本女子アイスホッケー選手県大会は、3月17日~19日に北海道札幌市で開催されました。

結果は3連敗と、桑原前監督に捧げる全国大会初勝利には届きませんでした。

ただ、ゴールキーパーの古平選手は18日の試合で92%のセーブ率を記録するなど大健闘。

チーム最年長の廣永温美選手は、桑原監督が生前口にしていた「どんなに点を取られても決してヘッドダウン(下を向く)するな。前を向け」という言葉を胸に頑張りました。

最後1点取れたことに意味がある。これからは若手も育てていきたいと、次なる全国大会に目を向けていました。