乗組員に「お母さん」と呼ばれた染物店の女性
当時、牛深に住んでいた佐々木ツルさん(1986年死去 享年88歳)。長良の慰霊式は、ツルさんが1人で行っていた供養から始まりました。

当時、牛深には長良が寄港し、染物店を営んでいたツルさんの元には、多くの乗組員が服を染めるため訪れていたといいます。しかし、戦局は日に日に悪化。親交のあった若者たちも前線へ赴きました。
そして、1944年8月牛深沖で長良が沈没。そのことを知ったツルさんは毎年1人で供養を続け、1970年には私財を投じて慰霊碑を建立しました。

福本壮一さんは、ツルさんの遺志を継ぎ慰霊式を続ける一人です。
福本壮一さん「ツルさん、戒名が『長良』ですね。ツルさんのところは、乗組員の皆さんのよりどころになっていて、お茶を飲みに来ていたそうです」

ツルさんが供養を始めたのは「親しくしていた青年たちへの思いがあったから」だと、福本さんは話します。
福本さん「『お母さん、お世話になりました』『実は今から戦地へ出かけます』と。みんな若い青年がほとんどだったと話していた。今からだという青年たちが亡くなったということに痛みを感じていたのではないかと思う」