みなさん「ホエイ」という物質をご存じでしょうか?チーズを生成する過程で生じる牛乳由来の液体で栄養価が高いとされますが、大半は廃棄されています。「牛乳は一滴も無駄にしない」と阿蘇市の酪農家が活用方法を模索しています。その現場を取材しました。

おいしそうにアイスを頬張る子ども達。
阿蘇市の「ASOMILK FACTORY(アソミルク ファクトリー)」です。


ここで味わうことができる製品には、世界で認められた牛乳が使われています。
施設の名前にもなっているこちらの「ASOMILK」2013年に食のミシュランガイドとされる国際味覚審査機構のコンクールで国内初の三ツ星を獲得しました。


この牛乳を製造し施設を運営しているのは阿部(あべ)牧場。


阿部牧場 阿部寛樹 社長
「牛タンです、牛タン…笑」


社長の阿部 寛樹(あべ ひろき)さんは45歳。70人あまりの従業員たちと共に、良質な牛乳とそれを用いた加工品を生み出しています。

阿部社長
「搾乳をして一滴でも無駄にしないように…例えばこぼれるところにはバケツを据えてとか、製造過程でも一滴も無駄にしないような作り方をずっとしている」

牛や牛乳への並々ならぬ愛情を見せる阿部さん。しかし今、ある課題に直面していました。

阿部社長
「一滴も無駄にしたくないという思いがあるのに、チーズを作るという過程だけにおいて無駄が出てしまう。勿体ないというか、悔しいというか」
  
こちらの工房では、数種類のチーズが製造されています。牛乳を加工していく過程で固形分と水分に分離し固形分がチーズとなりますが、その比率はわずか1割程度。残りの9割は「ホエイ」と呼ばれる液体です。


このホエイを加熱することで、さらに「リコッタ」というチーズを生成することができますが、それでも大半のホエイが廃棄されているのが実情です。

井上 千恵美さん
「ホエイ自体を何かうまいこと使えたらいいんですけどね。栄養もあっておいしいので何かになればいいんですけど」


高たんぱくで必須アミノ酸も含まれるなど栄養価が高いとされるホエイ。トレーニングの後などに摂取するプロテイン製品としても販売されています。ただ、こうしてホエイを加工して商品化できるのは、大規模な設備投資が可能な一部の企業に限られるといいます。

阿部社長
​「国内のほとんどの工房で、ホエイは活用方法がなくて捨てられている状態なんですね」

そこで、阿部牧場が考えたのが…

記者
「いわゆる普通の白ご飯に見えますが、実はある秘密が隠されているんです」


レストランで出すご飯にホエイを混ぜ込むというアイデア。これならば、大掛かりな設備が必要なく栄養価の高い食事として、付加価値を付けて客に提供することが可能です。


住吉隆臣シェフ
「これがホエイ入りご飯です。これで約20%ホエイが入っています」


水「8」に対してホエイ「2」の割合で米を炊きます。厨房のスタッフが研究を重ね、絶妙な比率を導き出した結果…

レストラン利用者
「普通のご飯と変わらないように私は感じます」


ーにおいはどうですか?
レストラン利用者
「匂いも特段感じないです」

レストラン利用者
「筋肉とかに良いと言われればですね。無臭で入っているのが分からないような感じなら、何にでも使えるかなと思いますけど」


「ホエイご飯」は、何の違和感もなく食べられていました。

また、レストランではカレーを煮込む際にも、コクを出すためにホエイが活用されています。


「牛乳を一滴も無駄にしない」ために、まずは身近にできることから取り組み始めた阿部牧場。今後はさらに研究を進め、酪農界全体にインパクトを与えるような新たな活用方法を確立したいと意気込んでいます。