今年5月に水俣病の関係団体と環境大臣の懇談会でマイクの音量を絞られた松﨑重光(まつざきしげみつ)さん(82)が、7月24日に環境省を訪れました。上京した背景には、環境省による、ちぐはぐな対応がありました。
“マイクオフ問題”と再懇談の経緯
『水俣病患者連合』の松﨑さんは、5月の大臣との懇談中にマイクの音量を絞られました。この環境省の姿勢に全国から怒りの声が相次ぎ、7月に再懇談が行われました。

再懇談で松﨑さんや団体は、認定患者の療養施設「明水園」を未認定の人にも開放することなどを求めました。
これに対し、伊藤信太郎(いとう しんたろう)環境大臣は。
伊藤信太郎 環境大臣「認定患者以外の人も施設に入れるように動こうと思っております」
再懇談の場についても「来年度予算に反映するための非常に重要な意見交換の場」と位置付けました。

その後の会議では…
しかし団体側によりますと、環境省は7月19日の実務者協議で「将来的に入居を望む認定患者がいるため、未認定患者の明水園入所は厳しい」と、大臣とは食い違う発言。さらに「来年度予算の概算要求は6月に事務手続きが終わった」と、大臣の発言から後退させました。

松﨑さんはこうした事態を受けて上京しましたが、体調は万全とは言えません。5月の懇談の後も半月ほど入院しました。
水俣病患者連合 松﨑重光 副会長「何もかも環境省と患者側の両方で話が合っていれば良いが、中途半端な気がする。環境省の考え方が“切り捨て”ではなく、“救う心”で考えてほしい」

そして面会へ
東京には、同じ団体の松村守芳(まつむら もりよし)さんと訪れました。

「このままでは再懇談の意味がなくなる」との危機感と、「水俣病の症状で苦しむ人たちのためできる限りのことをしたい」との思いが、2人を突き動かします。
面会終了後に取材に応じた環境省と団体側によりますと、来年度予算を巡る発言について環境省の担当者は「誤解を生むものだった」と謝罪したということです。
面会を終えた松﨑さんは。
松﨑さん「上京して良かったと思います。環境省は私たちが考えていることと変わらない気持ちでいた。誤解もあったかもしれないけど、良かったと思います」
また、環境省は明水園の入所など、残された課題について8月に開く実務者協議などを通じて検討する姿勢を示しています。

今回、「誤解」を生んだ環境省。信頼回復が求められる中で、「救う心」のあり方が問われています。