◆マカオのカジノも管理を強化
ところで「合法的なギャンブル」「認められた賭博」といえば、マカオのカジノを連想するだろう。マカオはかつてのポルトガル領で、返還後の現在は中国の特別行政区だ。中国国内で唯一、賭博が合法化されている。新型コロナ禍の前は、マカオ政府の歳入の8割がカジノの収入で占められていた。
一方、中国本土はカジノが禁じられている。共産党や国有企業の高級幹部はこれまで、不正を働いて得た金を資金洗浄(=マネーロンダリング)させる方法として、このカジノ賭博を悪用してきたといわれる。習近平政権は腐敗撲滅運動の大きな柱として、マカオの管理を強化、カジノの金の動きを厳しくチェックしている。
そうなると、マカオのカジノから、マカオ政府への歳入も減る。カジノは中国本土からやってくる一般の庶民をターゲットにしたい考えだ。カジノの大衆化だ。しかし、庶民の射幸心を煽り、賭博を日常化させる危険性も併せ持っているといえる。
◆中国客に依存する周辺国の公認カジノ
やはり、中国社会に根付いてきた賭博は、なかなか消し去ることは難しい。「中国人は賭けごとが好き」とは言い切れないが、マカオに限らず、東南アジアの国々や韓国の公認カジノでは、客の数も、使う金についても中国からの客に依存している。国境を接するラオスやカンボジアでは、国境からすぐのところに、中国資本が投じた中国人向けのカジノがいくつもある。
カジノを含んだIR(統合型リゾート施設)の構想が日本で進むが、ここも来日する中国人富裕層をあてこんでいる。このほか、日本の公営ギャンブルも同じように、中国人をターゲットにした戦略を持つケースもある。経済成長によって豊かになったことで、賭けごとへの関心がムクムクと湧き出す。中国ならではの歴史、土壌も関係があるのかもしれない。
中国には「上に政策あれば、下に対策あり」という有名な言葉がある。どんなに管理を強化しても、網の目をくぐるようにして生き延びる、中国独自のしたたかさを言い表したものだ。庶民から高級幹部まで汚染された賭博もそれに当てはまる。インターネット空間も含め、賭博に関しては摘発する側と、そこから逃れる術を講じる側のせめぎ合いが続くだろう。
◎飯田和郎(いいだ・かずお)

1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。







