日本では、警察の取り締まり強化もあって、暴走グループの数は減っている。最新の「警察白書」によると、検挙された暴走族の人数は、この4年間で3分の2に減った。一方、中国では暴走行為が増えているという。東アジア情勢に詳しい、飯田和郎・元RKB解説委員長がRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』に出演し、その背景にある「社会不安」と、それをおそれる習政権についてコメントした。
◆増える中国国内での暴走行為
私(飯田)は、福岡市中央区の、通りから少し離れた集合住宅に住んでいる。気温が上がって来たこのごろ、夜窓を開けていると、時折聞こえてくるのが若者たちの暴走行為による爆音だ。「まだこんなことをやっているのか?」と思う。
この爆音は、隣国・中国でも人々の頭を悩ませているらしい。中国・公安省(日本の警察庁に相当する部門)が先日、こんな通達を出した。中国のニュースサイトから紹介する。
“ここ数年、中国各地で、爆音を残し、猛スピードで街を走り回る暴走行為が大きな問題になっている。社会の秩序を乱し、人々の安全を損なうことから、市民の間から強い反発が生じている。
夏は暴走行為が増える季節。公安省はこのほど、全国に通知を出し、違法行為の取り締まり強化、道路交通秩序と公共の安全を維持するため、特別作戦を実施する。”
具体的には、全国で警察官を大量動員し、暴走行為の摘発だけではなく、違法車両の押収や、改造をする自動車工場の摘発などを進めるという。
中国でも、日本と同じ問題が起きている。複数の四輪車、または二輪車で、停止した状態から400メートルという短い距離の間でスピードを競う「ゼロヨン暴走」や、カーブを曲がる時にタイヤをわざと、滑らせて車体の向きを変える「ドリフト走行」が流行しているという。
日本では、それらを見物しに来る者もいて、暴走族をはやし立ててしまうケースもあるが、中国の警察部門も「道路はレース場ではない」と警告するとともに、一般市民に対して「暴走行為を見物するなどして、彼らを過熱させてはいけない」と要請している。
◆苦情の4割を占める騒音公害
暴走族対策に、警察以外の省庁も対策に乗り出している。まずは騒音被害だ。中央政府の生態環境省(日本の環境省に相当)によると、騒音公害は、国民からの苦情の多さでは第2位で、全体の41%に上る。その中で、この暴走行為への苦情が多数を占める。
そのような情勢もあって、中国政府はちょうど1年前の昨年6月5日から、騒音公害防止法を施行した。この中で、マフラー(=消音器)を外すなど、改造した状態で車両を運転することを禁止したほか、大音量のスピーカーを装備した車両も罰せられることになった。なんとしても、暴走行為を社会から追放しなくてはいけないと、ようやく法律が整備されたのだ。
当然、事故も起きる。
バイクを親に買い与えられた17歳の子供が、アルバイトをして金を貯め、バイクの購入費の何倍もの費用をかけて、時速百数十キロのスピードを出せるように改造した。だが、子供は自損事故を起こし、命を落とした。この事故を受けて、ある自動車修理工場の経営者がテレビ局の取材に匿名で答え「乗用車なら、時速200キロのスピードが出るまで不法改造した経験がある」と語っている。
数年前のことだが、ランボルギーニ(イタリアの高級スポーツカー)とフェラーリ(これもイタリアの高級スポーツカー)が北京の公道でスピードを競っていて、この2台が衝突した。運転していたうち1人は大学生。事故現場周辺の道路で、たびたび「レースのような競走が行われている」という苦情が近隣住民から寄せられていた。







