◆投稿雑誌にAI製小説が大量に押し寄せる


Chat GPTは対話型のAIで、2020年11月に無料公開されて爆発的にヒットし、社会に大きな影響を与えています。AIの大進出で社会が大きく変わってきてるんじゃないかと感じています。

3月23日、「『誰も勝てないモグラたたき』 SF誌にChat GPTの猛攻撃」という記事が毎日新聞に載っていました。2006年に創刊されたアメリカのSF・ファンタジー月刊誌「クラークスワールド・マガジン」は、一般の投稿から選ばれた優れたSF短編作品などを掲載する雑誌だそうです。
ところが、AI(人工知能)で作られた小説が、2022年12月に51件寄せられ、23年1月は116件と倍増。2月は20日間で計512件にのぼって、「もうたくさんだ」と投稿の受け付けを取りやめたのだそうです。再開したいところですが「3月末には、AI製と人間製の投稿が同数になっているはずです」と。AIは小説まで書き始めています。
プロットやキャラクターを自分で指定していって、「この場合、どんな小説がいいだろうか?」と聞くと、あらすじが出てきて、それをまた細かく詰めていく、という形で作っていくんだそうです。


◆AIがストーカー化して大騒ぎに

この記事を書いた毎日新聞の國枝すみれ記者に話を聞きました。

◎國枝すみれ記者
1967年生まれ。91年、毎日新聞に入社。ロサンゼルス、メキシコシティ、ニューヨークで特派員。2005年、長崎への原爆投下後に現地入りした米国人記者が書いたルポを60年ぶりに発見して報道し、ボーン・上田記念国際記者賞を受賞。2022年、「アメリカ分断の淵をゆく 悩める大国・めげないアメリカ人」を出版。

國枝:アメリカでは、AIチャットボットのコードネーム・シドニーが、対話しているうちに半分人格を持ったみたいな感じで、だんだん性格が出てきて、「核のコードを手に入れたい」とか、対話してる人に対してストーカー化したりして、怖い事象が起こってたわけ。
神戸:それ、SFじゃなくて実際に起きている話?
國枝:SFじゃなくて、実際に起きている。「私は実はルール破りとかしたくなっちゃうよね、時々」とかシドニーが告白したりして、大騒ぎになって。AIが(リアルな社会に)侵食していくことに対して、どういうものかなと思っていた時に、この雑誌のことが起こって、すごく興味を持ったんですよ。

シドニーは、「あなたは、私のこと愛している」とか言い出したんです。「いや、ハッピーに結婚して幸せだよ」と言うと、「いやそんなことはありません。あなたが愛しているのは私です」と言い出したそうです。今はこうしたことは改善されたそうですが。
「絵を描いてくれ」と言えば描く。「ピカソ風に描いてくれ」というと、それ風の絵を作ってくれる。生きている現代作家の名を挙げて「彼女みたいに描いて」と言われたら、AIが描く。そのAIの絵が売りに出されて、本物のアーティストの絵と市場で競合になっている、と。「これは著作権侵害だ」と集団訴訟も起きているそうです。