子どもに軍国主義を叩き込むカルタ
松山さんが講演したのは、大牟田市立三池カルタ・歴史資料館です。

※三池カルタ・歴史資料館
日本に1枚だけ現存する国産最古の「天正カルタ」(兵庫県芦屋市・滴翠美術館蔵)に、「三池住貞次(三池に住む貞次)」と製作者の記銘があることから、三池地方(現在の大牟田市域)が日本のカルタ発祥の地とされ、1991年に日本で唯一のカルタ専門資料館として開館。日本古来の百人一首やいろはカルタ・歌カルタ・花札をはじめ、海外のトランプやタロット・家族合わせなどで、計1万3,000点あまりを所蔵。
収蔵品には、戦時中に子どもたちが使っていたカルタも約200点あり、一部が展示されていて、梶原伸介館長と一緒に見ることになりました。

梶原伸介館長:元々カルタは、子どもの遊びとして明治・大正時代から普及し始め、ひらがなを覚えたり、道徳や教訓を学んだりするのが役割だったのですが、戦争が始まって以来、戦意高揚を目的に作られることが増えてきました。今回は、太平洋戦争が始まった昭和16年(1941年)から19年(43年)にかけて制作された「戦時カルタ」を中心に展示しています。
神戸:実際には、どう使われたんですか?
梶原館長:兵士を称える目的とか、銃後を守る女性たち・子どもたちの役割を書いたものが中心になります。カルタの札によって戦中の心構えとか、戦地に赴く兵士たちに対する思いとかを叩き込ませるというのが目的だったかと思います。
神戸:一般の家庭で使われてた、ということでしょうか。
梶原館長:そうですね。
神戸:国防婦人会に入っているお母さんが、少国民である子どもたちに、銃後の守りの気持ちを教えるために使った……。
梶原館長:はい、それが第一の目的だと思います。
神戸:梶原さんが一番印象に残った札は?
梶原館長:ああ、そうですね……。一番端的なのは、この「いのちささげて おくにのために」。戦時教育の最たるものかな、と。
神戸:子どもに「自分の命を、お国のために捧げましょう」と教えるわけですね。はああ……。