海水浴人口激減との類似性
話は脱線しますが、かつて日本には海水浴ブームがありました。最も盛んだった1985年頃には、夏休みに海水浴を楽しむ人が3800万人もいましたが、最近では360万人と10分の1以下に激減しています。
この減少の背景には、猛暑により海岸で寝転ぶことが困難になったことや、昔は「どれだけ日焼けしているか」を競うコンテストなどもありましたが、それらも今ではできなくなったことなどがあります。しかし、何より海水浴客を増やそうという話になっていませんね。
すなわち、時代の流れというものは不可逆なんです。今回のWBC放送権の問題も「もう昔のようには戻らない」中で、日本がどう振る舞うべきかを考えてみましょう。
WBC誕生と日本の受動的な立場
今回の放送権売買において、日本は交渉に全く手を出せていません。MLB選手会が設立したWBCIという会社が独自に権利を動かし、交渉の余地はありませんでした。
そもそもWBCが誕生した際、日本は当初、不参加を表明していたことを覚えているでしょうか。その背景には、アマチュア球界の山本英一郎さんがMLBと交渉を進めていた「スーパーワールドシリーズ」構想がありました。
これは、ワールドシリーズ優勝チームと日本シリーズ優勝チームが秋に戦う計画で、1999年頃には2003年からの開催で合意寸前でした。しかし、2001年に9.11同時多発テロが起こったことや、日本プロ野球界の後押しがなかったことにより、この構想は立ち消えになりました。
その後、急遽WBCが立ち上がると、アメリカは日本に対し、不参加で赤字が発生したら経済的損失を訴える、国際的に孤立するといった強い姿勢で参加を迫り、日本は参加せざるを得ない状況に追い込まれました。
第1回大会では、イチロー選手をはじめ選手たち自身も「この大会何なの? 本気でやるの?」と戸惑いを見せていたほどでした。しかし、大谷翔平選手などの活躍によって大会が盛り上がり、商品価値が生まれます。「スポーツが資本主義の世の中でのコンテンツとして成長する」という現実を示しました。