九大生体解剖事件の資料を初展示

冬至克也さんの父、堅太郎さんが所属していた西部軍では、ほかにも米兵の捕虜が殺害された事件があった。

その一つが九州帝国大学で捕虜を生体実験して殺害した「九大生体解剖事件」だ。

当時、医学生で雑用係として現場にいた東野利夫さん。

東野さんは4年前に亡くなったが、集めた資料が九州大学医学歴史館(福岡市東区)で今年初めて公開された。

この事件で殺害されたのも、日本を空襲していたB29の搭乗員たちだった。
九州に墜落し、捕らえられた搭乗員たちは西部軍の捕虜収容所に集められていた。


事件について独自に調査をしていた東野さんは、情報を聞き出すために東京に送られて難を逃れた墜落機の機長のもとへ会いに行っていた。

東野利夫さん(2014年取材・当時88歳)
「機長は、『日本の爆撃のことは一生涯の苦しい体験だった』と言った。自分の心臓は、そのために絶えず苦しいと。みんな戦争の被害者ですよ、勝った側もね。精神的な被害者なんですよね」

資料展の会場を、日本の近代史を研究しているアメリカのペンシルベニア州立大学のラン・ツヴァイゲンバーグ教授(48)が訪れていた。

ラン・ツヴァイゲンバーグ教授
「アメリカでは、九大生体解剖事件のことは、本当に誰も知らない。知られていない。日本の中でも、九大の学生でも、このことについて知識があるかどうかはわからない」

一方で、ツヴァイゲンバーグ教授は、戦争の被害と加害を同時に教えることは難しいと語った。

ラン・ツヴァイゲンバーグ教授
「空襲の立場から見たら、日本は被害者。空襲の目的は市民を殺すことです。加害と被害を同時に教えることは難しい。白と黒では分けられないから複雑です。だから、大学生と一緒に考えたい、日本の大学でもアメリカの大学でも、できれば一緒に考えてみたいと思います」