謝罪会見のポイントはシナリオ作りから
田畑:竹中さんが担当したものは、他にどんなものがありましたか。
竹中:タレントさんがやっているサイドビジネスの焼肉屋さんで食中毒が出たとかね、タレントさんが酔っ払ってガールズバーで店長に暴行をはたらいて、そのまま逮捕されたりとか。
田畑:そういう会見があると、竹中さんはどういうポジションなんですか。会見に出て答えていたってことですか。
竹中:出ます。だから僕はその記者会見のシナリオを作るんです。細かいところまでは書きませんけれど、例えば僕が司会をしながら責任者で、当事者もおって、あとはたまに社長がおったり、担当弁護士がおったりするんです。その時に誰がどの順番でどう喋るとか、何について喋るとか、ここはみんなで立ち上がって頭を下げるとかっていう段取りを決めなあかんのですよ。そのためには何月何日の何時にどんなことが起こったかというファクトをしっかり聞き取っておかないと。例えば焼肉屋さんの場合でも、4人の方が入院していたら、「5人ぐらいですわ」って言ったら怒られるんですね。入院しているということは確実に人数も分かってるし、容態も分かってるわけですから。事によったらその人らの個人情報入りますけど、例えば大学生と言っていいとか、10代やったら「ビール飲んでへんか」と言われるんで。そういう意味でのファクトをしっかり聞き取った上で、誰にどんな順番で謝るかっていうのを設計するんですね。もちろん頭を下げに行って「申し訳ございませんでした」と言ってるんですけども、やっぱりその前後で何をどう順番に説明するかっていう組み立てが仕事やったですね。
田畑:そこを間違ってしまうと、また大変なことになってしまったり、火が広がっていったりしてしまうような。
竹中:余計に炎上したり、怒っていた人が余計に怒り出すみたいな。
田畑:そんなご自身の謝罪会見などの経験から得たものって何ですか。
竹中:そうですね。実は僕、刑務所で釈放される前の社会復帰事業をやってるんですけども、何を言いたいかというと変な話、僕が塀の中に入る可能性はゼロではないというかね。同じ人間として悪気ないけど過ちを犯してしまうことがあります。交通事故もそうですよね。誰もぶつけようと思って走ってないのにぶつけてしまう、みたいなことで言うと、(刑務所に入ることは)そんなに特殊なことではない。誰もが事件事故に合わせたり合うこともある。だから謝罪が必要だ。その謝罪って何なのか、誰に何について謝っているのか、再発防止をどう具体的に考えているのか。とかみたいなことを考える。会見するのがゴールじゃないですからね。食中毒で入院している人がいるならば、その人のお腹が痛くなくなる日が来て、仕事なり学校なりに復帰することが目標ですよね。そういう意味では、やっぱり事故があった前日の状態に戻すっていうための謝罪のシナリオ作りが僕の仕事だったんですね。
不祥事を起こしたタレントが再びメディアに出るには時間がかかる
田畑:ファクトをしっかり捉えて、それを伝え、補償するべきところはしっかり補償し、そして、その前に戻せるのであればそういった、いかに戻していくか速やかにっていうようなね。
竹中:さっきのガールズバーで暴力振るった人が、本業の漫才をテレビでするっていうのは、5年ぐらいかかったんじゃないですか。そんぐらいかかるでんすよ。ダメージというかね。でも、それがやっぱりある意味憧れられて、メディアで仕事する人たちが背負っておかないとあかん部分ですよね。いい意味でのいろんな例になるわけですから。ただ失敗もあるんで、それをいかに二度とそういうことがないようにするかっていうことも、声に出して言わなあかんですね。「次から事故らないように一生懸命やります」とか「必死で頑張ります」と言うけれども、一生懸命やって当たり前やしね。必死でやって当たり前なんで、そこには具体的な再発防止策がいるんですよ。具体的でないと防止策とは言いませんから。具体的に何について謝るか、その前に誰に謝るかっていうのがものすごく大事ですね。順番を間違えるとやり直しになりますよ。
田畑:ありがとうございます。明日以降は、その経験を踏まえた上でいろんな企業が問題事件、事故などを起こしてしまった後の会見を開いて「あそこは対応間違ったよね」というところを竹中さんに伺います。今日はここまでありがとうございました。
竹中:ありがとうございました。