2021年4月、広島市の住宅で72歳の夫が自宅での「老老介護」の末に、長年連れ添った80歳の妻を殺害する事件が起きました。あれから2年…。裁判で明らかになった事実や地域での取材を基に、事件を振り返ります。

”承諾殺人” 夫妻を知る人からは介護の事情…

2021年4月30日、広島市安佐北区の住宅で、当時72歳だった村武哲也(むらたけ・てつや)さんが、自宅で、長年連れ添った当時80歳の妻・亥聖子(いせこ)さんの首を、家にあったマフラーで絞めて殺害しました。

哲也さんが病院に来ないことで連絡を受けた介護支援専門員が2人の自宅を訪れたとき、哲也さんは手首に傷を負った状態で見つかりました。

警察は、回復を待って、哲也さんを「殺人」の疑いで逮捕しました。

事件の発生が警察によって報道機関に明かされた5月、現場付近の住民を取材して聞いたのは、村武夫妻の「介護」の事情でした。

(向かいに住む森脇康則さん・2021年)
「介護ねぇ、奥さんが脳梗塞で倒れられて、それからずっと村武(哲也)さんが見ておられたんじゃけど、ようされとったですよ」

捜査の結果、哲也さんが検察に起訴された罪名は「承諾殺人」。

哲也さんは、亥聖子さん本人の承諾を得て、殺害した罪に問われることになりました。72歳と80歳の高齢同士2人っきりで暮らし、介護をしていたという哲也さん。

当時私は、哲也さんに、事件をなぜ起こしてしまったのか聞きたいと思い、広島拘置所で面会を申し入れました。

面会室に通されると、アクリル板の仕切りの向こうの扉が開き、拘置所の職員が、車いすに座り腕に点滴がつながれた男性を連れてきました。哲也さんです。

(記者)
「体調はどうですか?」

(哲也さん・拘置所で面会時)
「全身が痛む」