女子プロボクシングの東洋太平洋スーパーバンタム級王座決定戦で今年6月、判定勝ちを収め、バンタム級と合わせて見事、2階級制覇を成し遂げた菊池真琴さん。異例のキャリアをたどり、性的少数者のレズビアンであることも公表している菊池さんの半生に迫ります。

職を転々…知人の死をきっかけにボクシングの道へ

2階級制覇を達成した菊池さんは試合後、故郷の大分県竹田市で過ごしました。帰省して必ず行くのが地元の長湯温泉。炭酸泉で行う水中トレーニングは血行を促進し筋肉のリカバリー効果もあるといいます。

「素直に嬉しかったです。今はもう次に向かって考えていて動き始めなければならないなと思ってます。まずは防衛、タイミングが合えば世界っていう部分があるので、この両方のラインをしっかり頭の中で考えています」

菊池さんは大分県竹田市出身。小学生のときに地元の先輩から勧められた剣道に打ち込みます。高校は剣道の名門、熊本にある阿蘇高校に進学。その後、東海大学時代には全日本学生剣道選手権で3位の実績を収めました。大学を卒業後は警察官、東京・浅草で人力車を引く車夫、刑務官、映像編集、リラクゼーションスタッフなど様々な仕事を経験します。

「なんか目に飛び込んできて、やろうって思ったものに手を出していたっていう感覚です」

そして菊池さんが29歳の時、ボクシングの道を進んでいくことを決断しました。

「大学の剣道部の後輩ですごく仲良かった子がいたんですね。その子が骨肉腫という骨のがんになって5年間の闘病の末、私が29歳の時に亡くなりました。そのときに自分の人生を振り返ってみると『何も挑戦してないし、何にもしてない、何をしてるんだ』と思って、何かに挑戦しようと決めました。その頃、リオオリンピックがあって、オリンピック出場を目指したいと思ったんです」

「剣道がいきる競技は何だろうと考えました。たどり着いた答えがボクシングだったんです。調べたその日にそのままボクシングジムに入会して、『オリンピックを出るためのボクシングがしたいです』と伝え、アマチュアボクサーとして活動を始めました」

アマチュア時代、菊池さんは2018年の全日本選手権ウェルター級で優勝するなどし、東京オリンピックの金メダリスト・入江聖奈選手らとともに日本代表に選ばれたこともありましたが、東京オリンピック出場の夢は叶いませんでした。挫折を味わった菊池選手は男子に比べてまだ認知度が低い女子プロボクシングの世界にあえて足を踏み入れます。

そして、スポーツ界でも根強い男女差別の現状を変えようと、自身が性的マイノリティのレズビアンであることも公表しました。