この反応を起こすのが「燃料電池」です。電池の中で起きているのは燃焼ではなく、静かな化学反応。水素を再び水に戻す過程で、電気(と熱)が生まれます。

特筆すべきは、その保存能力です。一般的な蓄電池(バッテリー)は時間が経つと自然放電してしまいますが、水素はボンベに詰めれば長期間の保存が可能。 この実証プラントでは、晴天時なら1日で7000リットルのボンベ約3本分(一般家庭の2〜3日分の電力に相当)の水素を製造できる能力を持っています。

地域で作ったエネルギーが 脱炭素を目指す「工場の動力」に

この長崎発の技術に、日本を代表する企業も熱視線を送っています。 イワテックの岩元孝一郎社長は、大手自動車メーカーの九州工場との連携についてこう明かします。

「『所内の電源を、再エネ由来の水素で確保したい。イワテックさん、供給できますか?』と、先方からお話があったのが最初でした」。

現在、福岡県のトヨタ自動車九州では、脱炭素化に向けた取り組みの一環として、イワテックが製造したグリーン水素を活用。工場内の動力源として、再エネ由来の燃料電池が稼働しています。

地域で作ったエネルギーが、県境を越えて大手企業の脱炭素化を支える。まさに「エネルギーの地産地消」と「広域連携」のモデルケースとなっています。

「島」の暮らしを守る新たな一手。災害対策から世界展開へ広がる可能性

グリーン水素のポテンシャルは、工場の動力だけにとどまりません。岩元社長は、その「保存性」が災害時や離島の課題解決に役立つと強調します。

「蓄電池は2、3ヶ月で電気が減っていきますが、水素なら1年、2年、3年と持たせることができます。災害時の非常用電源にもなりますし、例えば『島』の電力確保にもつながります」。

多くの離島を抱える長崎県。島で作った再生可能エネルギーを水素に変えて保存・調整すれば、天候に左右されず、島の中だけでエネルギーを自給自足することも可能だといいます。

イワテックが見据えるのは、これらの技術を統合した「エネルギーマネジメントシステム(EMS)」の構築、そしてグローバル展開です。
不安定な自然の力を余すことなく活かし、必要な時に必要な場所へ届ける。エネルギーの地産地消への挑戦が始まっています。