言語学者の加藤和夫さんが「気になる日本語」を取り上げます。今回は加藤さんのSNSに届いた質問から「使いにくい“あなた”の謎」についてです。
外国人のための初級の日本語の教科書に「あなたはタイ人ですか?」「いいえ、私は中国人です」といった例文が出てくることがあります。しかし、こうした教科書で勉強した外国人が初対面の日本人に向かって「あなたは〇〇ですか?」のように使うと、違和感を覚える日本人が多いのではないでしょうか。
つまり、「あなた」は日本語の代表的な二人称代名詞のように思われていますが、現実にはあまり使われていない、使おうと思っても意外に使いにくいという不思議な状況なのです。
加藤さんが今も講師を務める、社会人対象の日本語教師養成講座の修了生で、現在は海外で暮らし、日本語も教えている石川出身の男性から、SNSを通じて以下のような質問がありました。

加藤さんのSNSに届いた質問:「日本語教師が意見を交わす交流サイトで、「あなた」という呼称について議論があります 。そこでは、「あなた」という二人称を使うと、きつく感じられるという意見があり、私も大筋そう感じるのですが、ある人は「あなた」をよく使うという話もありました。 「あなた」がきつく感じて使いにくいという人と、よく使うという人がいることについて、 ひょっとして方言差があるのかなと思い、先生にお聞きしたいと思いました。」
なぜ二人称代名詞の代表とも言える「あなた」が使いにくい人がいるのか、その理由を考えてみたいと思います。