弁護側「殺害を実行したのは大久保被告」「何も知らされていない」

これに対し、弁護側の冒頭陳述。開口一番、こう主張した。「林さんを殺害したのは大久保被告である。事前の共謀はしていないし、現場での共謀もない。殺害を実行したのも大久保被告だ」

これは検察側の主張と真っ向から対立する。その根拠について、弁護側は。

 「そもそも大久保被告がTwitterで林さんから依頼を受けた事件であり、嘱託殺人までに林さんと被告は一切関わりがない。林さんの自宅で何をするのかは具体的に知らされておらず、犯行を知ったのは林さんの家を出た後だった。長年にわたる因縁の関係があり、大久保被告の頼みを聞くしかない立場だった」。

 また、林さんが振り込んだ現金130万円については、「大久保被告が林さんに対し、偽名で『山本直樹』と名乗っていたので、山本被告の口座に現金が振り込まれることになった」と説明。こうして弁護側は、「部屋の中で行われた犯罪の中身を知らなかった山本被告は無罪であり、仮に犯罪が成立するとしてもほう助に留まる」と主張したのだ。

山本被告と大久保被告とのメール 件名は「仕事」「おたずね」

 双方の冒頭陳述が終わると、「証拠調べ」という手続きが行なわれた。検察側は、 大久保被告と林さんが繋がりをもったTwitterでのやり取り、そして大久保被告が山本被告に送ったメールの文面などを読み上げていった。

 平成30年12月、林さんの「『安楽死が必要』と考える医師が日本にいない不思議」などのツイートに、大久保被告が反応したことがきっかけだったという。

【Twitter上のやり取り】(2019年1月)

林さん:「作業は簡単でしょうから、カリスマ医師じゃなくてもいいです」
大久保被告:「たしかに作業はシンプルです。訴追されないならお手伝いしたいのですが」
林さん:「嬉しくて泣けてきました」

こうして殺害計画が進み始め、2019年11月以降、大久保被告が山本被告に対し、メールで計画をもちかけていくようになったと説明した。メールは、「仕事」や「おたずね」といった件名で書かれていたという。

 【大久保被告から山本被告へのメールの内容】
「詳細はあとで伝えるが、口座番号を教えてほしい」
「近々、京都に行く予定は無い?ALSの患者の家の様子を見てきて欲しい」
「1時間で終わる」「振り込みがあるので、それを確認してから動く」
「“医療に紛れて殺害するマニュアル”という本を書いている。安楽死の希望者には売れると思う。警察は、病死には興味がない」

 そして、山本被告の銀行口座に林さんから130万円が振り込まれたことが確認されると、大久保被告は林さんに過去のメッセージのやり取りを削除するよう指示。そして大久保被告と山本被告は、11月30日の犯行当日の夕方、京都で落ち合うことを約束した。 犯行当日は、2人は午後4時48分ごろに林さんの自宅近くのホテルで合流、午後5時21分ごろから37分ごろまでの間に自宅で林さんを殺害したあと、帰路についたとされている。合流から実に、1時間以内の出来事だった。