「線香の一本でもあげたい」震えた背中


いま心中に浮かぶ、妻への思いを問われると、証言台の丸まった背中が震えた。

弁護人の問いかけに、男は涙ながらに答えていく。

弁護人 「いまの気持ちは?」
男   「お墓参りにも行きたいし…、線香の一本でもあげたいと思っています…」
弁護人 「認知症が進むまでは、普通の夫婦でしたよね?」
男   「旅行に10回くらい行ったり、楽しいこともあった」
    「許してくれと言うしかない」
弁護人 「どうしていたらよかったと思う?」
男   「介護認定をちゃんと受けさせればよかったと思います」
弁護人 「でも、病院に行ってくれなくて。我慢の限界だった?」
男   「はい…もうこれで終わりにしたいと」
弁護人 「次男には?」
男   「…………すまなかった…」
弁護人 「改めて、妻に対する気持ちは」
男   「すまん、すまんと思っています。会いに行きたい、線香もあげたい…」