■ミルクボランティアが抱える2つの課題とは

  

 
 子ネコの命を救うミルクボランティアには、2つの課題があります。そのひとつが金銭面です。鹿児島市から1匹あたりミルク3缶やトイレシートなどおよそ6,500円分が支給されますが、追加分は自費で購入しなければなりません。子ネコのワクチン接種や医療費もボランティアの負担です。
 もうひとつの課題が命を預かる責任。一度引き取った子ネコは返すことができない決まりで、里親が見つからない期間が長くなればなるほど、負担は大きくなります。杉木さんの会でも、譲渡までに病院代などにおよそ4万円かかった猫もいました。

譲渡会でのネコ


■「行政の努力だけでも 愛護団体の努力だけでもダメ」 ​

鹿児島市の溝口和代さん。ボランティアで捨てネコなどの里親探しをしていますが、医療費がネックだと言います。

捨て猫の里親探しのボランティア 溝口和代さん


(溝口和代さん)「譲渡するまでにワクチン接種したり健康診断するので、1匹あたり2~3万円かかるんです。行政だけが努力することでもないし、愛護団体だけが努力することでもなく、みんなの努力が必要だと思います。」

鹿児島市は今後、ミルクボランティアから支給品などについて要望があれば対応を協議する方針です。

鹿児島市の担当者

(鹿児島市生活衛生課 萩原信一課長)「様々な課題に対しても対策を考え、殺処分ゼロが維持できるよう取り組んでいきますので、飼い主の方々には、ペットを家族として最期まで見届けるよう理解をお願いしたいと思います。」


■殺処分ゼロを続けるために 本当に必要なこと

 2020年度、全国で保健所などに収容されたネコは4万4,798匹。うち離乳していない幼齢の子ネコは3万879匹でした。約半数は譲渡されましたが、1万3,030匹が殺処分されました。保健所での病死などを含んだ数です。(下グラフ)

収容されたネコの多くは幼齢個体=子ネコ


 そして収容されたネコ4万4,798匹のうち77%は「所有者不明」、つまり野良ネコや捨てネコ。その62%=2万7,854頭は、離乳していない「幼齢」の子ネコでした。「幼齢」がこれだけ多くを占めるのは、野良ネコどうしの繁殖で生まれた子ネコや、ペットが生んだ子ネコを人が捨てるケースが多いことがうかがえます。 (下グラフ)


保健所が引き取ったネコの大半は「所有者不明」 その多くは子ネコ

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 記事の冒頭に出てきた、生まれたばかりの3匹の子ネコも、木箱に入れられた状態で公園に放置されているのが見つかりました。2022年度の統計がまとまれば、保健所などに引き取られた「所有者不明」の「幼齢」として、数万匹のうちの3匹にカウントされることになります。

 

 鹿児島市での殺処分はゼロになりましたが、人に捨られたネコや、去勢・不妊手術もされないまま、人からえさを与えられて繁殖するネコは後を絶ちません。ボランティアの1人は、殺処分の元をたどると、人間の無責任な行動に行きつくと指摘します。

(犬猫と共生できる社会をめざす会鹿児島 杉木和子理事長)「安易に動物愛護管理センターに連れられて、引き取られるネコが増えれば、殺処分ゼロは達成できない。動物愛護管理センターに連れていかなければいけないような命が生まれないようにすることが一番だと思います。」

 ようやく達成できた殺処分ゼロ。続けるには、ミルクボランティアの課題を解決するだけではなく、ネコの周りにいる人間がモラルを高めることが求められます。