「私たち家族が人生の中で初めて体験した、一番つらく悲しい28時間」
事件が発覚したのは、2月19日午後9時ごろ。北九州市小倉のマンションの4階の一室で、この部屋に住む会社員、新原清加さん(当時24)が、腹部から血を流して倒れているのが見つかった。警察官が駆け付けたときは清加さんはすでに死亡していた。
新原さん家族は、7時間ほど車を走らせてようやく昼前に小倉北警察署に到着。警察から事件や加害者について説明を受けた。この時、すでに加害者は緊急逮捕されていた。逮捕されたのは清加さんと同じマンションに住む当時30代の男だった。
説明のあと「司法解剖からご遺体が帰ってくるまで、外で待っていてください」と言われた。部屋を出てエレベーターに乗ったものの「えっ、どこで待てばいいの…?」「署内に家族の控室とかあるわけじゃないんだね」「私たちが何も聞かなかったから、どこか行く当てがあると思ったのかな…」親子3人でつぶやきながら、外へ出た。どこで待てばいいのか、もう一度署内に帰って聞く勇気はなく、警察署の駐車場にとめた車の中で親戚に連絡した。その後はあてもなく小倉市内をぐるぐる回り、結局公園の駐車場に入ったという。
「早く娘に会いたい、連れて帰りたい」何時ともいわれず、ただ「待っていてください」と言われた家族は、警察からの連絡を車の中で待ち続けた。
司法解剖の結果、死因は腹部を何度も刺されたことによる失血死だった。

「やっとやっと娘に対面できたのはもう夜中。それから亡き娘を連れ、また高速をひたすら走り続け、ようやく我が家に帰り着いたのは21日月曜の明け方6時頃でした。私たち家族が人生の中で初めて体験した一番つらく悲しい28時間あまりの出来事でした。」
22日が友引で、葬儀は23日に延びたが、「一日でも長く娘と家で一緒にいられたことを神様に感謝した」と新原さんは話す。
通夜から葬式にかけて、小学校から高校生の同級生、北九州から大学の友達、証券会社で取引があった客まで弔問に訪れた。手紙を寄せてくれた人もいた。