老朽化が進む室戸市役所の庁舎整備について12日、住民投票が告示されました。「庁舎を移転し建て替えるのか、今の建物を耐震補強するか」が論点となっています。

こちらが現在の室戸市役所の庁舎です。1983年に建てられ、築39年がたち、老朽化が進んでいます。4年前に行われた耐震診断で「大規模地震が発生した際に崩壊または倒壊する危険性がある」と指摘されました。

現在の室戸市役所の庁舎 「大規模地震が発生した際に崩壊または倒壊する危険性がある」と指摘

また、現在の庁舎は津波浸水区域内にあり、住民団体の代表らでつくる検討委員会は去年8月、浸水区域外への移転建て替えを植田市長に答申した経緯があります。

現庁舎は津波浸水区域内

住民投票は19日に投開票が行われ、13日から期日前投票が始まっています。こちらが投票用紙の見本です。(1)庁舎の移転、建て替えを行い、現市役所の機能を津波浸水区域外に移す。または(2)現庁舎の耐震補強、改修工事を行い、防災機能を津波浸水区域外に移転する。

投票用紙の見本

住民はいずれかに○をつけ投票する形です。○以外に何か書いたり、✕をつけたりすると投票が無効になります。

室戸市は先月から市内41か所で住民説明会を開き、移転か、補強か、それぞれのメリット、デメリットを市民に説明してきました。

主な内容がこちらです。まず、整備後の耐用年数ですが、移転建て替えの場合はおよそ60年、現庁舎の耐震補強の場合、およそ20年でその後は新たな庁舎の建て替えの検討が必要になるとしています。

整備後の耐用年数

続いて津波対策です。移転建て替えの場合、最大クラスの地震が発生した場合でも津波被害は受けません。一方、耐震補強の場合、津波浸水区域内にあるため、最大クラスの地震が発生した場合、庁舎建物やその周辺で最大1メートルから3メートル浸水し、がれきの流入などで被害を受ける可能性を否定できないとしています。

津波対策

そして市民が最も心配するのが事業費用です。移転建て替えの場合、現段階での概算事業費は47.2億円と巨額になります。一方、耐震補強の場合はおよそ15.9億円としていますが、ほかに地下設備の移設や防災拠点施設の新設整備として、さらに10億円が必要としています。

事業費用

今月11日に室戸市役所で開かれた最後の住民説明会を取材しました。

室戸市は先月から市内41か所で住民説明会を行ってきました。これまでに参加したのはのべ350人で、当日有権者数のわずか3.2%程度と関心の低さが浮き彫りとなりました。

関心の低さが浮き彫りに

この日の参加者もおよそ30人と空席が目立つ中、植田市長が移転建て替えと現庁舎の耐震補強についてそれぞれのメリットとデメリットを説明。およそ47億円とされる移転建て替えについて、市民から異論や心配の声が相次ぎました。

(市民)
「市長さんの考えはすごく壮大で、私は宇宙人のような感じでほんとについていけないところがあります。私たちの生活でキンメダイは何倍の値段になってるかご存じですか?市民の手に届いてる状態ではないんですよ。そういう問題が、お金が要ることが出てきたら市民としては受け入れ難い」

(室戸市 植田壮一郎 市長)
「数字だけ見たら大変ですけれども後々の負担が大きく残って財政に加担するようなことのないような計画をしっかりと立てた上で動いていくということを前提にご相談をしているというのが正直な気持ちです」

住民投票条例を請求した元市職員の久保田浩さんです。およそ15.9億円の耐震補強の事業費に加え、防災拠点施設の新設整備などとして、さらに10億円が必要だとする市の説明に疑義を唱え、「移転建て替えへの誘導ではないか」と批判します。

(住民投票条例を請求 元市職員 久保田浩さん)
「住民投票の請求で手分けして回ったんですけど1700~1800くらい(署名を)集めたんです。自分で回ったのが800人くらいやったんですけどほとんど90%以上が(移転建て替えに)反対。市民の反対の理由というのがこの市民生活の中であえて庁舎を建て替えするというのが1つの不満でしたね。市役所自体が建て替えの形で上等な庁舎を作っておくというのはナンセンスなんじゃないかなと思って。結構、この建物立派なんですよ。だから(耐震補強で)十分だと思います」

住民投票条例を請求 久保田浩さん(元市職員)

これまで市民に説明してきたことに対し、植田市長はこう受け止めています。

(室戸市 植田壮一郎 市長)
「我々の力が足りないというところもあるんですが、説明会への参加者が思わく少ない感じで残念に思うし行政の方も何か工夫が必要だったかなと反省もしているところです。今回は庁舎の問題で住民投票ですけどこの投票率というのはこれから将来の室戸市に対して、市民の気持ちがどれだけあるのかといったようなことが数字に表れるのではないかということを思うと少しでも高い投票率にして、市民もそうですけれども市外の方々にも室戸が評価してもらえるように頑張っていかんといかんのじゃないかなと感じています」

室戸市 植田壮一郎 市長

こちらは去年11月20日に投開票が行われた室戸市長選挙の投票率です。45.74%と50%に届いていません。

去年11月20日に投開票が行われた室戸市長選挙の投票率

今回の住民投票では投票率が50%以上になった場合、市議会と市長には「投票の結果を尊重し整備を検討する義務」が生じますが、植田市長は「投票率が低い場合でも投票の結果を参考に方向性を定め、議会に提案する」としています。投票は今月19日に市内27か所の投票所で行われ即日開票されます。

県選挙管理委員会によりますと県内での住民投票は市町村合併の是非を問う形で旧野市町(のいちちょう)で実施された2005年以来だということです。