マラソン日本記録保持者 鈴木健吾選手

北海道の空の玄関口、新千歳空港から車で30分ほど行くと、静かな緑地公園が広がる。ここを拠点に約1か月半前、鈴木健吾選手は富士通陸上競技部の恒例、夏の北海道千歳合宿で、黙々と距離を伸ばしていた。

単刀直入に尋ねてみる。「調子はどうですか?」

異例の猛暑続きの北海道で日焼けし、精悍さを増した鈴木選手は「はい、ボチボチです」と即答。言葉は控えめだったが、満面の笑顔には順調な調整ぶりが伺える。

インタビューは午前中の練習終了後、合宿先のホテルにセッティングされた。もちろん目的はMGCへの意気込みを語ってもらうことだが、フィジカル面の状態よりも、まず聞きたいことがあった。

「マラソン日本最速ランナーという肩書きに慣れましたか?」

鈴木選手は静かに話し始めた。
「自分が『日本記録保持者』だという気持ちは、あまりないという感じですね」

言葉に力みはない。そして真っ直ぐな視線をこちらに向けて続けた。

「自分はどちらかと言うと『チャレンジしていってワンチャンスをしっかりものにする』みたいな『隙あれば狙っていくぞ』というのが好きなタイプなので、今はもうチャレンジャーという気持です」