今回はSDGsの14番「海の豊かさを守ろう」に繋がる取り組みの紹介です。
畑で通常捨てられている「ある花」を使って、海の汚染油を回収できないかと研究を続ける高校生たちがいます。
液体に沈めた茶色くて、丸い物体。
その正体は・・・乾燥させた「ネギボウズ」です。
暖かくなるとネギの先端に咲く花で、野菜の栄養を吸ってしまうため、ほとんどの場合切って捨てられています。
このネギボウズを使い松山南高校・理数科の3人はある研究を進めています。
<松山南高校理数科3年・新宮紗瑛さん>
「ネギボウズによる海洋汚染物質の除去です」
彼らが注目したのは海を汚す原因の1つ「海洋油」。
主に船の事故などで海に流れ出た燃料油で、去年1年間に海上保安庁が確認した海洋汚染493件のうち、70%近くが油が原因だったそうです。
海洋油は生き物の命を脅かすため、専用のスポンジで回収したり、薬剤を撒いて分解したりしていますが、その効率や安全性の向上が求められています。
そこで、彼らはネギボウズを使って海洋油を取り除けないかと考えました。
研究が始まったのは去年4月。
教諭の家にあるネギ畑を訪れたことがきっかけでした。
<松山南高校理数科3年・新宮紗瑛さん>
「畑で見たネギボウズの花粉が朝露をはじいているのを見て」
水をはじくということは油を吸う性質があるのではと考えた3人。
ちょうど授業で行う課題研究のテーマを探していたため、すぐにネギボウズを摘み取って実験を始めたと言います。
<松山南高校理数科3年・新宮紗瑛さん>
「ネギ農家の人たちにとってネギボウズが廃棄物になっているというのを分かって、いらなかったものが使えるというのがすごく良いと思う」
3人はまずネギボウズが吸着できる油の量を調べることにしました。
ビーカーに海水と海洋油に見立てた灯油をそれぞれ100ccずつ注ぎます。
この液体に10秒間ネギボウズを浸け、水滴を振るい落とします。
すると・・・海水に対し1対1の割合で入っていた灯油が、ネギボウズを入れた後には
減っていることがわかります。
<松山南高校理数科3年・新宮紗瑛さん>
「海水の幅は変化なしで灯油だけ幅が小さくなっているので、いま乾燥ネギボウズがこの混合液体から灯油だけを吸い上げたことが分かる」
実験前は4グラムだったネギボウズは油を吸って16グラムに。
3人の研究ではネギボウズ2グラムにつき、最大9グラムの灯油を吸着できることを突き止めました。
ネギボウズの茎や種を包む皮には無数の小さな隙間があります。
この隙間が油だけを絡めとっていると考えられるそうです。
彼らの研究は去年11月に北海道大学が主催した「海の宝アカデミックコンテスト」のマリン・サイエンス部門で最優秀賞を獲得しました。
現在は、せっけん水を使って使用済みネギボウズから油を取り除き、繰り返し使えるようにする実験を行うなど、実用化に向けた研究を進めています。
<松山南高校理数科3年・新宮紗瑛さん>
「浮き輪や救命ボートが付いているのと同じように乾燥ネギボウズを船に積んで、船から油が流出する事故が起きた際に油を回収できるというのが私たちの理想」
畑の厄介者として捨てられてきたネギボウズ。
安全で効率的に油が回収できる「海の掃除道具」として活躍する日がくるかもしれません。