愛媛県四国中央市の通所型リハビリテーションで高齢者が夢中になって取り組んでいるという“足こぎ車椅子”。老化防止だけではないその魅力と可能性を紹介します。

四国中央市にある通所型リハビリテーション
四国中央市にある通所型のリハビリテーション。午前9時前、施設の送迎車が続々とやってきました。利用者の多くは85歳前後。老化による筋肉の衰えやひざや腰のケガなどからの回復を図ろうと、ここを訪れています。
そんな利用者のみなさんが今、夢中になっているというのがこちら。

車椅子をこぐのは“足”
足こぎ車椅子です。車椅子でも車輪を回すのは手ではなく、足です。

東北大学と企業が開発
宮城県の東北大学と企業が開発した足こぎ車椅子。その名の通り足元にはペダル、ハンドルとブレーキは手元のグリップで操作します。
わずかな足の力でもペダルが回るよう設計されていることから、病気や加齢によって自立歩行が難しい人でも、座った状態で自分自身の力で移動できます。

(足こぎ車椅子普及協会 村上諒 委員)
「たいていの方は最初こいでみて『軽い!』というのが第一印象で『私でも乗れるかな…』というところから始まって、毎日来られる方もいるんですが清々しい汗をかいて笑顔でいつも“足こぎ”から降りてくれているので、こっちも見ていて楽しいです」


足こぎ車椅子歴5年
四国中央市の篠原孝子さん(90)。足こぎ車椅子歴は5年で、今も週2回、軽やかにペダルを回しています。

篠原孝子さん(90)
「これに乗ってこぎかけたら、こげるんですよ、足!今でもしびれは残っとんだけどな」


かつて自転車で転び、脊柱管狭窄症と診断された篠原さん。長年、下半身の痛みやしびれなどに悩まされていましたが、こちらの施設が足こぎ車椅子を導入したのを機に乗り始めました。

篠原孝子さん(90)
「自分でこげろ、足が回るのに。ひとりでに。これ乗って帰った時は楽しいですよ、足も動くし」

足こぎ車椅子歴3年
ペダルを回し始めて3年目、四国中央市の山中りつ子さん(71)。46歳の時に脳卒中で倒れ、左足の麻痺など長年後遺症に悩まされてきましたが、足こぎ車椅子と出会いある変化が現れたといいます。

山中りつ子さん(71)
「2年くらいは足をペダルにいつも巻いていました。ある時にリハビリの先生が『ちょっと巻かずにのけてみる?』と言うてのけました。そしたら動くじゃないですか。本当に感動しました」


この施設が足こぎ車椅子を導入し10年。今ではおよそ100人が週に2回程度、1~2キロの距離を1時間ほどかけてリハビリを楽しんでいるようですが、その効果とは…

大腿四頭筋の体重支持指数は改善傾向がみられる
足こぎ車椅子の効果を施設が独自に調査したデータです。膝を伸ばす大腿四頭筋の筋力について、平均年齢86歳、利用者47人を6か月間調べたところ、最大筋力を体重で割った体重支持指数は、右足も左足も改善傾向が見られたといいます。

(足こぎ車椅子普及協会 村上諒 委員)
「足にまひがある方で“足こぎ”で毎回こいでくれている人なんですが、徐々に体重をまひ足に乗せられるようになって、歩きがスムーズになったというのは感じました」

“足こぎ”オリンピック
効果が実感できれば今度は成果を発表したくなるもの。去年、普及協会では足こぎオリンピックなるゲーム大会を開き、利用者たちがコーンをすり抜けるスラロームや、車庫入れゲームなど12種目で巧みな車椅子さばきを披露していました。

(参加した男性)
「毎日 目標を目標を決めて踏みよるんですけど、やっぱりこういうゲームは良いですね。心がワクワクします」


足こぎ車椅子でお花見に出かけることも
リハビリは楽しくなければ続かないと、ペダルを回しながら少しずつ取り戻した自信と笑顔。時には皆さん一緒にお花見に出かけ季節の移ろいを感じ、心の健康をも実感しているようです。

山中りつ子さん(71)
「みんなと一緒に走った時、『自由』とはこんなんだと思って、嬉しかったですね」

(足こぎ車椅子普及協会 村上諒 委員)
「“全ての人に健康と福祉を”ということで、自分で動いて自分の健康は自分で守れるようになってくれたらいいかなと思います」

まだまだ自分の力で行きたいところへー。回すペダルの可能性に、きょうも笑顔が広がっています。