大学と地域が連携して行う「まちづくり」をテーマにしたフォーラムが、札幌市の北海学園大学で12日、開かれました。

フォーラムが開かれた北海学園大学(札幌市・12日)

 フォーラムは、大学生に給付型の奨学金を支給している公益財団法人「地域育成財団」が主催して北海道で初めて開いたもので、学生や自治体関係者らが、オンライン参加も含めておよそ150人参加しました。



 フォーラムではまず、同財団を支援する「HITOWA(長谷川)ホールディングス」創業者の長谷川芳博さんがあいさつし、大学生にエールを贈りました。

財団を支援する長谷川芳博さん

 「HITOWAホールディングス」創業者・長谷川芳博さん
「私は旧丸瀬布町(まるせっぷ・ちょう)=現遠軽町丸瀬布の出身で、18歳の時『少年よ大志を抱け』という言葉を胸に東京へ出て、仕事を始めました。今はハウスクリーニングや老人ホーム、保育園、観光農園などの経営に携わっていますが、七転び八起きの日々でした。学生の役に立つ支援をしたいと思っています」。

ニセコ町・片山健也町長

 続いて、ニセコ町の片山健也町長が「ニセコ町における多様な連携と自治創生」と題して基調講演し、官民連携でまちづくりをしていることを報告しました。

ニセコ町・片山健也町長
「私たちの町は人口およそ4400人の小さな町です。ニセコ町でかつて農場を経営した作家の有島武郎が残した精神=相互扶助をまちづくりの核に据え、住民誰一人も取り残さないことを掲げています。地方自治の主役は住民のみなさんで、役場は住民の活動を支援する役割に過ぎません。官民連携でまちづくりを行っていますが、最近は林業の会社を町と民間会社で設立しました。子どもたちが算数の授業を森の中でやったっていいじゃないですか。林業は町の産業の一つで、観光や教育と関連付けて住民自治を実践してゆくことを考えています。『共感』をキーワードにして、自由な風が吹くまちづくりを目指しています」。

北海学園大学・西村宣彦教授

 北海学園大学経済学部の西村宣彦教授は事例発表を行い、大学と地域の連携の経験からの教訓を語りました。

北海学園大学経済学部・西村宣彦教授
「学生に単位を出すだけが大学の役割ではなく、学生が地域に学ばせていただくことを実践しています。具体的には新篠津村(しんしのつ・むら)で、学生と役場のみなさんでランタンフェスティバルを企画したり、ニセコ町で町内会のみなさんと防災・魅力マップをつくったりして、地域創生を一緒に考えています。大学は普遍的価値を追求し、地域・自治体は固有価値を追求しますから、連携する場合、ともすると互いに不満が募ったりすることもあります。しかし双方が互いに敬意を払って、ほどよい緊張感を持って協働することが大切なように思います」。

パネルディスカッション

 パネルディスカッションでは「北海道における大学×地方自治体の取り組み」をテーマにして、学生と自治体職員が、まちづくりに関わるそれぞれの活動を話し合いました。

北海学園大学4年生・大橋弥生さん


 北海学園大学4年生の大橋弥生さんは、コロナ禍の下で、地域に出向いて得た人とのつながりを報告しました。

北海学園大学4年・大橋弥生さん
「大学に入学した時は、コロナ禍の最中でしたが、札幌生まれの私はこんなにも広い北海道のことを何も知らず、札幌以外の場所を知りたい、そこに暮らす人を知りたいと思いました。道北の中川町に2週間、シェアハウスで暮らす機会があり、スーパーで知り合ったおばあちゃんと話し合ったりすることで地域のことが深まる体験をしました」。

法政大学3年生・佐藤絢斗さん

 東京出身で奥尻高校に”離島留学”をした経験がある法政大学3年生で、地域育成財団の第一期奨学生の佐藤絢斗さんは、人や物が一極集中している東京と地域の違いを話しました。

法政大学3年・佐藤絢斗さん
「東京では無視されることもよくありますが、地域では一人一人のダイバーシティ(多様性)があります。奥尻高校では生徒会長もやらせてもらう機会があり、自然豊かな所で自分は何が得意なのかを知ることができました。その経験があって、今、大学で地域創生を学び、真狩村などでまちづくりの提案などをさせていただいています」。

新篠津村商工観光係長・田口雄さん

 新篠津村商工観光係長・田口雄さんは、大学と連携して村のイベントを新しくつくり上げた実績を報告しました。

新篠津村商工観光係長・田口雄さん
「北海学園大学さんと石狩振興局さんと村で協業して、何か村の名物をつくり出そうと動き、ランタンフェスティバルを開催することができました。コロナ禍の下でのスタートだったので、願いを描いた灯篭を夜空に上げるイベントで、一人の大学生の発案がきっかけでした。大変なこともありましたが、今年は3年目の開催を終え、犬ぞりレースも一緒に行うなど村の名物イベントに育ちました。その後、『空のまち』をキャッチフレーズにして村の活性化を続け、来月には天文台をオープンさせるまでになりました。『畑の中の小さな天文台』として、たくさんの人の来村を期待しています」。

公益財団法人「地域育成財団」代表理事・横尾隆義さん

 フォーラムは、主催した地域育成財団・代表理事の横尾隆義さんが「学生は地域の目線に近いことが武器で、それがパワーになっていることを感じました。新篠津村やニセコ町の各自治体さんには、学生を受け入れ、育てていただいていることを実感しました。
特にニセコ町長のお話では、表層的ではない住民自治を実践していることを知りました」と締めくくり、イベントを終えました。