■事故前にクマ出没情報も…入山規制は必要か?
堀啓知キャスター:
知床で、クマによる人身被害は、2005年の世界自然遺産の登録以来初めてだということです。

堀内大輝キャスター:
事故を受けて一部閉鎖されていた知床五湖の遊歩道は、18日、利用が全面再開されました。
しかし、地元のネーチャーガイドによりますと、ガイドの依頼が8割キャンセルになった人もいたということで、観光面に大きな影響が出ています。なぜ、いままで事故が起きていなかった場所で、事故が起きてしまったのでしょうか。

事故が起きた羅臼岳は、標高1661メートル。登山には、往復で8時間以上かかる上級者向けの山です。

近年、百名山ブームもあり、多くの登山客が訪れる人気の山ですが、それとともに、人間とクマとの接近も増えています。

 今回の事故が起きる前の、10日、12日にも至近距離でクマと遭遇していて、12日は、登山者がクマよけスプレーを噴射したものの、その後数分間、クマに付きまとわれたということがありました。

それを受けて、環境省などが、登山口に注意を呼びかける看板などを設置しましたが、入山規制はせず、今回の事故に至りました。

実際に入山を規制したのは事故後の14日です。

堀啓知キャスター:
知床五湖の遊歩道では、2011年から散策する際に、入山者に事前のレクチャーを義務付けています。その上で、経験豊富なガイドを引率させる制度もあるということで、クマとの共生という意味では、先進的な取り組みをしている地域でもあります。

コメンテーター 鶴岡慎也さん:
こういういたたまれない事故が起きたのは本当に残念。入山は自己責任かと思うが、クマ出没の情報があったら規制が必要かなと。クマの生態も変わってきていると思うので、これだけの自然が魅力的な地域でもあるので、対応が必要になってくるのでは。

堀内大輝キャスター:
あの狭い地域にヒグマ500頭がいると言われていて、世界的にみてもヒグマが高い密度で密集している場所なので、他の山と同じように考えてはいけないのかなというふうにも思われます。

知床で40年以上ネーチャーガイドを務め、知床五湖の登録引率者でもある綾野雄次さんに聞きました。

◆知床ネイチャーガイド 綾野雄次さん
・クマの情報があった時点で、入山を規制しなかったことが疑問
・知床五湖はガイド引率が必要だが、羅臼岳はフリーで入山できる
⇒管理方法を考えなくてはいけないのではと指摘

堀内大輝キャスター:
入山規制を決める主体的な管理者が環境省なのか、地元の自治体なのか、あいまいになっているという指摘もあります。

堀啓知キャスター:
世界遺産に登録されてから、国内外からの観光客がたくさん来ているわけですが、一方で野生動物との距離がどんどん近くなってきています。なかには、餌をあげてしまったり、かなり接近してカメラに収めようとしたり…危険な行為も増えてきた結果、“人慣れ”も
クマに及ぼしてしまったのか…とも思います。

コメンテーター 鈴井貴之さん:
人間にとってもクマにとっても出会わないようにするのが大切。そのためには、危険な地域には規制もやむを得ない。自然の中での行為は、大丈夫だと安心することではなく、何事に関しても疑ってかかって行動することが大切だと思います。

堀啓知キャスター:
安全上のルールの整備など対応が迫られます。