■日課の散歩ができない…遠のく日常

7月12日の未明、新聞配達中の男性がクマに襲われ、死亡した事故は、未だに小さなマチに影を落としています。

日課の散歩ができない。

子どもたちは、学校までクルマで送り迎え。

大相撲の九重部屋の夏合宿が中止に。

人気スポット「海峡横綱ビーチ」です。

厳しい暑さにもかかわらず、事故の影響で海開きは10日遅くなりました。

夏休みを迎えていますが、初日のビーチは親子1組だけです。

小学生
「楽しい。(先生が)大人いないといけないよって」


ビーチの監視員
「午前中は何人か来ていた。まだ怖い、うちの周りも草刈りをしている」


今も残るクマへの恐怖心。

石名坂さんは、現場近くの草藪が、事態をより悪化させたと指摘します。

野生動物被害対策クリニック北海道 石名坂豪 代表
「ここに引きずっていって中に引き込んだというのは、完全に肉食動物の状態にクマがなっている状況。動物を捕らえたときは横取りされないよう落ち着いて食べるために、やぶの中に隠す」

先週、北海道羅臼町で撮影されたシカを襲うクマです。

捕らえた獲物を藪に引っ張り込もうとしています。

今回の事故も、近くに草が生い茂る藪があったため、クマが、人を襲った後も執着した可能性があるのです。

麻原衣桜 記者
「さすがに山まで引きずるということは?」


野生動物被害対策クリニック北海道 石名坂豪 代表
「少しやろうとしたかもしれないけど、おそらくは成功しなかったと思う」

事故が起きる数日前から、現場周辺で相次いでいたクマの目撃情報や痕跡。

さらに3日前には、現場の集落に隣接する月崎地区でクマにごみ箱が倒され、生ごみの入った袋が無くなっていました。

野生動物被害対策クリニック北海道 石名坂豪 代表
「大概最初の生ごみ被害はこういう山際で起こるんですけど、一度山際で生ゴミに餌付いてしまうと、山から多少離れたところであっても、完全に執着心のスイッチが入ったクマが住宅地徘徊して、ほかの生ごみ探し回るので」


事故後も「ごみ」への執着は続きます。

麻原衣桜 記者
「2日後の14日には2度にわたってスーパーマーケットの隣のゴミの入った倉庫が、完全に鍵がかかってたのを壊して、中のゴミを荒らすっていう」


野生動物被害対策クリニック北海道 石名坂豪 代表
「あれがまさに典型的ですよね。どんだけいい生ゴミの臭いがしても、国道沿いの山から離れたところに、途中にやぶが多少あったとしても、いきなりはやらない。人身事故があるかどうかは別にして、スーパーのごみ倉庫がやられた、あそこまでは全道どこでも簡単になり得ます」


事故から6日後、クマは、駆除されました。

現場から800メートル離れた住宅街の草藪でした。