堀啓知キャスター)
ご自身もゲイの当事者として活動もされている、満島てる子さんは、どう映画をご覧になっていかがでしたか。


満島てる子さん)
自分自身が男性同性愛者として、一つ一つのシーンに様々な思いを重ねながら、本当に噛み締めるような思いで映画を観ました。

ゲイ、あるいは男性同性愛者の歴史的な記録をドキュメンタリーの背景として描きながら、それと同時並行で、主人公の長谷さんと周囲の人たちといった、ゲイとしてとして生きる人たちの生きざまを、しっかり世代ごとに感情まで浮き彫りにして描かれている、貴重な記録だと感じました。

吉川監督に伺いたいのは、映画を観た見た方は、同性愛の当事者も含め、どんな感想を寄せられているんでしょうか。

監督・吉川元基さん)
まず当事者の方々からは、本当の自分を隠しながら、でも社会に溶け込んでいて、普通に生活しているゲイの人を取り上げてくれて感謝しているという感想の言葉が多かったですね。

そして同性愛の当事者ではない方からは、日本初のゲイの商業雑誌『薔薇族』の編集長が、どういう人物で、どんな思いで出版してきたのかということを知って驚いた、そうした感想が寄せられました。

森田絹子キャスター)
映画の中で、同性愛者の位置づけを大きく変えた存在として登場するのが、雑誌「薔薇族」です。

1971年に創刊された、男性同性愛者向けの雑誌です。・文通欄が、同じ境遇の仲間とつながる手段がなかった時代、心の救いになったといいます。

そして、初代編集長の伊藤文学氏は、同性愛者ではなかったということなんです。

堀啓知キャスター)
自分も「薔薇族」の存在は書店などで見て知っていましたが、編集長の伊藤文学さんは、どんな人物なのでしょうか。

監督・吉川元基さん)
私が取材した印象としては、非常に心やさしい人だと感じました。雑誌『薔薇族』の編集長を務めた伊藤文学さんご自身はゲイではなく、いわゆる“非当事者”が雑誌を出版することに対して“ゲイを食いものにしているのではないか?”という批判の声もあったんですね。

ただ、伊藤さんは雑誌にご自身の自宅の住所や電話番号を記していて、実際に『薔薇族』の読者が自宅を訪問したときに、応接間にあげて、そこで悩みに耳を傾け、雑誌作りに反映させていた…、そういう弱い人たちの立場に立とうという意思があった人物だったのではないかと思っています。

森田絹子キャスター)
映画『94歳のゲイ』は、7月6日から12日まで札幌の映画館“シアターキノ”で上映されます。

■映画『94歳のゲイ』
語り:小松由佳 監督:吉川元基 プロデューサー:奥田雅治
撮影:南埜耕司 編集:八木万葉実 録音:西川友貴
音響効果:佐藤公彦 タイトル:平 大介 配給:MouPro.
製作:MBS/TBS 製作幹事:TBS 2024年/日本/90分/ステレオ/16:9 ©MBS/TBS