注目の映画が7月6日から札幌で公開されます。長い間、同性愛者であることを誰にも打ち明けられずに生きてきた、男性のドキュメンタリーです。

■映画『94歳のゲイ』が描く、ある男性の人生―
長谷忠さん:「この顔がいちばん好きやねん…いいと思うやろ」

映画『94歳のゲイ』より(監督:吉川元基・©MBS/TBS)

長谷忠(はせ・ただし)さん。自身が同性愛者であることを、誰にも打ち明けず、心に秘める人生を歩んできました。

ケアマネージャーの梅田さんとは、自身のセクシュアリティを打ち明けあった仲です。

映画『94歳のゲイ』より(監督:吉川元基・©MBS/TBS)

長谷忠さん:「聞いたかな、あんたのことはな、えーと思ったよ」
梅田正宏さん:「え、なんのこと?私が…ゲイだってこと?」

長く、同性愛は世界的に病気の一つとされ、厳しい偏見の目にさらされ続けてきました。

記者:告白はした?
長谷忠さん:「しない、告白なんて一切してない、一度もしていない」

映画『94歳のゲイ』より(監督:吉川元基・©MBS/TBS)

1971年、同性愛者たちに光を当てる雑誌が誕生します。“薔薇族”元編集長 伊藤文学さん:「弱いものに目をむける気持ちが、僕の中にあったんじゃないかなと思うんですね」「異常でも変態でもないと言い続けたわけだからね…」

映画『94歳のゲイ』より(監督:吉川元基・©MBS/TBS)

雑誌“薔薇族”の文通欄に、読者から寄せられた投稿です。

《僕はいま、冷たい部屋の中で孤独にあえいでいる》

文通欄には、多い時で1000人以上、当事者の声が寄せられたといいます。

この日、長谷さんは、勉強会に参加しました。

参加者の男性:「いまパートナーと、もう20年一緒に暮らしている」

世代の違う当事者たちの語りは、長谷さんの心も丈夫にします。さらに、長谷さんを慕う、新しい仲間も現れます。

新たに知り合った男性:「幸せだと感じますか…、自分の人生は」
長谷忠さん:「今は寝てばっかりやけど」
新たに知り合った男性:「最終的に幸せならよかった」

映画『94歳のゲイ』―。長谷さんの生き様を通し、同性愛をめぐる当事者たちの歴史を記録します。

長谷忠さん:「同じゲイどうしやもん、とっても考えられません、僕にとって…まるで奇跡や」

森田絹子キャスター)
ドキュメンタリー映画『94歳のゲイ』が描いているのは、同性愛者であることを誰にも打ち明けられずに生きてきた男性、長谷忠さんが歩んできた人生の物語です。


かつて同性愛は、日本では治療できる精神疾患とされてきました。そんな時代のなかで、長谷さんは、自らの思いを詩にしたためることを“心の拠り所”にして生きてきました。

そうした長谷さんの作品は、詩人・谷川俊太郎さんにも認められるほどでした。

長谷さんは、孤独の中を生きてきて、90歳を超えて、同じ境遇を持つ仲間と出会うことになります。そして、長谷さんの環境が、少しずつ変わっていく様子を、映画『94歳のゲイ』では描いています。

長谷忠さんという人物の生きざまを深く掘り下げながら、日本の同性愛をめぐる当事者たちの歴史を紐解いていくドキュメンタリー映画です。