■突然、失われた夢…そして“小さな遊園地”に訪れた最大の危機

 大地さんの曾祖父が68年前に開園し、父親は4代目の園長。ただ家業を継ぐ気持ちは、まったく無かったと大地さんは話します。別の夢があったからです。

プロテニスプレーヤーになる夢をかなえるため、大地さんは13歳のとき単身、京都に移住。通信制の高校で学びながら、ひたすら練習と試合に明け暮れます。

高校2年生のときには、インターハイの団体戦で全国優勝。しかし、プロを目指して、国内ツアーに参戦する中、アクシデントに襲われます。京都に単身移り住み、プロテニスプレーヤーを目指していた加藤大地さん

4代目園長の長男 加藤大地さん(25)
「テニスのプロで食べていくのが、小さい頃からの目標でした。それが18歳のとき、手首をケガして…ラケットを握れなくなって。テニスを辞めたら、何をすればいいんだという不安ばかりでした」

痛めた手首は、1年にわたる治療やリハビリの甲斐もなく、回復することはありませんでした。そんな人生の目標を見失いかけた19歳の大地さんに、父親の健一さんが「遊園地でアルバイトをしないか」と声をかけたのですが…。

4代目園長の長男 加藤大地さん(25)
「父が毎日“掃除、掃除”と言うんですけれど、すごく汚れていて…掃除を毎日やるのが本当に嫌でした」

『函館公園 こどものくに』の営業は、冬期間を除く3月~11月まで。雨の日は原則"休園"という、決して無理をしないスタイルで、ここまで来ました。営業期間は3月~11月、「雨の日」は原則的にお休み(「函館公園 こどものくに」)

それが2020年。かつてない危機に直面することに…。新型コロナウイルス拡大で、年間の入園者は、それまでの15万人から9万人まで激減。さらに緊急事態宣言を受け、函館公園が閉鎖に。『こどものくに』も営業を休止せざるを得ませんでした。

大地さんが函館に戻り、家業を手伝うようになって2年目の春のことでした。

4代目園長の長男 加藤大地さん(25)
「毎年、桜を観にたくさんのお客さんが来るのに、人が居ない函館公園を見て(父は)“もう営業はできなくなるかもしれない”と漏らしていた」

桜の季節にお客さんが一人もいない遊園地…。開園以来、初めてのことでした。

4代目園長の長男 加藤大地さん(25)
「新型コロナの打撃を受けてから、父と話す機会が増えました。『こどものくに』を残していかなきゃ…という思いも、強く意識するようになりました」