9月に入っても、各地で連日厳しい暑さが続いています。子どもたちが熱中症の疑いで亡くなるケースが相次ぐ中、愛知県名古屋市では、今年から救急搬送のビッグデータを元にした予測システムで、毎日子どもの熱中症予防に取り組んでいます。その現場を取材しました。

「救急搬送データ」と独自の研究の融合で精度の高い予測が可能に!

日本各地で、小中学生が部活動や体育の授業後に熱中症とみられる症状で亡くなるなど、教育現場の熱中症対策は今や重要な課題です。

2023年、記録的な猛暑となった名古屋市内では、熱中症による緊急搬送者の数が前年比で4割近く増えました。しかし、発生場所を小中学校などに限ると2割ほど少なく重症者もいません。この秘密を解く鍵は、毎朝名古屋市内の学校に送られる「熱中症予測データ」にありました。

名古屋市消防局と名古屋工業大学が今年6月から作っているのが、熱中症予測のグラフです。予測に使われているのは、名古屋市消防局の「救急搬送データ」。いつ、誰が、どのような状況で熱中症になったかが事細かに記録されています。このビッグデータを使った予測システムを確立したのが、名古屋工業大学の平田晃正教授です。

(名古屋工業大学・平田晃正教授)
「救急からのデータによって運動中に起こった熱中症なのか、お祭りのときに起こった熱中症なのか、こういった詳細な分析を加えることができるようになった」

ビッグデータと独自の研究を融合させ、精度の高い予測を可能にしました。

9月に潜む熱中症リスク、夏休み明けの“暑さ慣れリセット”とは?

平田教授が行ったシミュレーションでは、子どもは大人より周りの気温の影響を受けやすく、同じ環境でも1.5倍から2倍早く体温が上昇。こうした子どもの性質を加味し、リスクを算出しています。熱中症による子どもの搬送者数が、名古屋市内で4人以上と予測される日を100%とし、60%を超えれば「高いリスクがある」として屋外の運動を屋内に切り替えるなど、判断の目安に活用してもらっています。

(名古屋工業大学・平田晃正教授)
「子どもと大人の感覚は違うけど、世の中が大人中心で動いているために、いつの間にやら子どもが倒れてしまう」

子どもを対象にした予測に加え、名古屋市のどの区が熱中症の危険度が高いのかについても、毎日情報提供を行っています。熱中症リスクの予測に使う計算式には、ある特徴があります。気温や湿度のほかに「暑さ慣れ」の係数が組み込まれているのです。

熱中症は、体温調節がうまくできず体内に熱がこもることで引き起こされます。暑い日が続けば、体が暑さに慣れ、汗をかけるようになってくるため熱中症のリスクは下がりますが…。

(名古屋工業大学・平田晃正教授)
「9月になって学校行事が始まったときに、(夏休み中)エアコンの中でずっと過ごしていた子どもは熱中症のリスクがある」

2022年9月14日には、名古屋市内の3つの中学で同時多発的に熱中症が発生。体育大会の練習などをしていた生徒19人が救急搬送されました。休み中、エアコンの効いた部屋で過ごして暑さ慣れがリセットされている可能性がある9月は、特に警戒が必要です。