トゥレット症の困難の一つとして、当事者の家族への負担もあげられます。
例えば同じ部屋で数秒おきに我が子が叫んでいたら?叫ぶほどではなくとも咳払いを延々としていたら?運動チックでテーブルをドンドン叩いていたら?
病気だとわかっていても、愛している我が子であったとしても、ときに子どものチックが辛くなってしまうことも稀ではありません。
止めたくても簡単には止められないチック、やりたくないのにやらざるを得ない強い衝動に襲われてしまうチック、当事者はもちろんのこと、その家族までも苦しめてしまうことがあります。

高校を卒業してから行く先もわからず人生をただ彷徨うだけの生活、20年近く続いただろうか、私は何のために生きているのか、人生とは一体何なのか…
しかしこのままではいけないと思い、根本的治療法が存在しないことは理解していたが、改めてトゥレット症とその治療に向き合うことにした。
どれだけの先生のお力をお借りしたことだろうか、どれだけの人の支えがあっただろうか、40歳を迎えた頃に私のチックは軽快した。
完全にチックがなくなったわけではない、チックの重症度が軽減しコントロールが可能な状態になったのです。
公の前に私が出るとき、おそらく誰一人として私がトゥレット症であることに気付くことはないでしょう。
しかし今も音声チックと運動チックが併存するトゥレット症です。チックをコントロールできたとしても身体に感じる違和感不快感は存在します。
身体に感じる不快感を例えるのは難しいのですが、例えば蚊に刺されたときに感じる痒みを不快感とするならば、チックのコントロールとは、患部をかかずに痒みを我慢し平静を装い続けるようなことです。
痒みが強ければ強いほどコントロールは難しくなります。今の私はその痒みが軽減されている状態です。1人のときやチックを出しても問題のない状況ではチックを出したりもします。
未だ謎の多いこのトゥレット症・チック症で苦しんでいる方は、全国にごまんとおられるはずです。