年齢や国籍を問わず、様々な事情で中学校を卒業していない人たちが通う学校があります。中学卒業の資格を得られる中学夜間学級、通称「夜間中学」です。「学び直したい」「夢をかなえる道を切り拓くため」など、抱える思いもそれぞれです。愛知県内で1学級のみの夜間中学の今を取材しました。

「ただ勉強が楽しい」自信と人生を取り戻すために通う元不登校の女性

名古屋市中区にあるビルの一室では、夜間中学が開設されています。午後6時に授業が始まり、一日2コマで週3日。義務教育のため無料です。近くの中学校を借りて体育や家庭科も行い、2年間で中学卒業の資格が得られます。

いつも一番前の席に座る北林悦子さん(40歳)は、化学の実験で今まで目にしたこともない言葉をノートに書き取ったり、英語の授業では隣の外国人のクラスメートにちょっと教えてもらったり。何十年ぶりかの勉強に大変さ以上の楽しさを感じています。

(夜間中学に通う北林悦子さん)
「手を上げて発言できることに、自分でもびっくりしています。いまはコンプレックスをなくしたいというよりは、ただ勉強が楽しいなと」

授業が終わると夜8時すぎ。一人暮らしの家に自分の車で帰宅します。以前は学校に辛い記憶しかなかった北林さん。

(夜間中学に通う北林悦子さん)
「友達だと思っていた子から、嫌がらせの手紙が来た。答案用紙にも落書きされるし…かなりショックで、人が信じられなくなった」

不登校になったのは中学2年の頃。教室の張り詰めた空気感が嫌いでした。友達の笑い声も次第に、自分に向けられているような気がして怖くなりました。それから高校には進学せず、転職を繰り返し、仕事も不安定でした。北林さんにとって夜間中学の教室は、自信と人生を取り戻すための学びの場です。

「中学2年生を続けたかった」コロナ流行で日本へ戻れなかったフィリピン人の学生

夜間中学ができたのは、戦後間もない1947年でした。戦争の混乱で中学校に行けなかった人のための学校でしたが、今はその世代も減り、生徒のほとんどは外国人です。その理由は就職のため。多くの企業では、高卒以上が採用の条件となっており、高校へ行くためにまず中学卒業の資格が必要だからです。

北林さんと同じクラスに通う、ネルデン・ジョイさん(18歳)。2015年に、父親の仕事の都合でフィリピンから日本へ移り住み、日本で小学校を卒業。中学校にも通っていましたが…。

(夜間中学に通うネルデン・ジョイさん)
「中学2年まで通っていたけど、コロナだったから学校進学できなかった」

フィリピンに一時帰国した際に新型コロナの世界的流行で入国制限が始まり、日本に戻れなくなったのです。2022年に再び来日できましたが、元の中学校には戻れませんでした。

(夜間中学に通うネルデン・ジョイさん)
「あのときの中学2年生を続けたかった。だからいまの夜間学級に通い続けて、高校まで行きたいなと思っている」

ジョイさんにとっての夜間中学は、未来を拓くための学びの場です。