戦後80年、これまで多くの元日本兵に証言して頂いたが、ここ数年でそのほとんどの戦争の証人らが逝ってしまった。
年々、当事者にあたる取材も難しくなっている。こうした中で、2年前に出会ったのが名古屋市に住む長澤春男さん(100)。

何度も自宅を訪れ、何度も電話で聞き取りをする中で、徐々に当時の話をしてくれるようになった。過酷な強制労働の中で、生き延びようとロシア語を独学でマスターし、300人の部下を束ねる中隊長にまで昇進する中で出会ったロシア人女性から、ついにはプロポーズまでされた。
これは敵国でもあったロシア人女性、クリスタル・ターニャとの禁断の恋のエピソードでもある。戦後80年、自身もこれまで80年間封印してきた逸話というが、本人の許しを得て、ここに解禁する。知られざるシベリア抑留体験記として。

自宅を訪れると、いつも両親とターニャが迎えてくれた。特に彼女の父親は、明るく、誠実な人柄の春男さんのことが好きだった。何より、人一倍努力をし、短期間でロシア語をマスターした春男さんを、1人の男として買っていたのだろうと推測する。