脱サラし、クラフトビール職人になった男性がいます。男性には、妻と一緒に叶えたい夢がありましたが、もう妻はいません。亡き妻と叶えたかった夢とは。また、クラフトビールに込められた男性の思いとは。

「楽器の名前をビールに」と提案した妻 脳腫瘍が判明し他界


愛知県春日井市にあるクラフトビール店「バタフライブルワリー」。シトラスの香りと優しい苦みの「ペールエール」に、濃厚な甘みが特徴の「黒ビール」など、個性豊かな12種類を揃えています。

ビールの銘柄にはすべて楽器の名前です。

(バタフライブルワリー・入谷公博さん)
「ビールの中でも軽いものとかアルコール度数の高いものとか、濃厚なものとかを音色に例えている」


楽器の名前を付けようと言ったのは、プロのフルート奏者だった妻の光江さんでした。2人には「光江さんが店でフルートを吹いて、人が集う場所にしたい」という夢がありましたが、光江さんはもういません。

ある日、入谷さんが運転する車の後部座席で光江さんが「気持ち悪い」と訴え、脳腫瘍が判明。家族で光江さんの帰りを心待ちにしていましたが、望みは叶わず、2週間後の2020年11月、40歳という若さで息をひきとりました。

脱サラする決心を後押ししてくれたのは亡き妻


入谷さんは脱サラしてビール職人になったのですが、実はその決心を後押してくれたのは光江さんでした。


入谷さんは、「妻との夢を形にしたい」という思いから、光江さんが亡くなった1年後の2021年11月「バタフライブルワリー」を開店。オープン時はまだビールの醸造免許はなく、自分が選んだクラフトビールを提供。

開店の翌月には、入谷さんは店で一夜限りのクリスマスコンサートを開きました。光江さんに向けたものでもあります。長年の演奏仲間が、光江さんが生前使っていたフルートで結婚式の思い出の曲「You Raise Me Up」を奏でました。