高橋教授はもともと、渦の研究を続けていました。そんな中、山小屋で使える発電装置を求めていた長野県の山岳組合と出会いました。

山頂では突風が吹くため、一般的な風力発電装置では強風で簡単に壊れてしまいます。「全く違う原理の風車を考えなければならない」。そう考えた高橋教授がひらめいたのが、研究をしていた渦の原理でした。

【高橋教授】
「なぜ人類はこんなことに気が付かなかったんだ。だって風車の羽をひねるなんて結構、大変でしょ?だけどこれ、ただの棒の後ろに輪っかをつけただけですからね」
棒状であればペットボトルでも、飲むヨーグルトの容器でも、キュウリでも、きりたんぽでも風車は回るそうです。

そして、これまでの風車の原理と最も大きく違うのは、回転させる力=トルクが大きいため、少ない回転数で強い力を必要とする発電機を回すことができることです。
つまり、車で言えば高い馬力を持っているということ。風速10メートルの強い風を送ってみると…

【佐藤社長】
「感じてもらえれば分かりますけど、相当風が吹いている。ただ、風車に手が当たっても、風車は止まるだけで手も何にも痛くない。これが低回転であることの魅力」

一方、一般的な構造の風車の場合は回転が速く、手で触れることは危険です。
【高橋教授】「普通の風車がどんなに怖いか…」
この特徴を生かせば、住宅街やビルの屋上など身近な場所に設置できる安全な風車ができます。既存の風車と競合するのではなく、新たなニーズを捉えたいとしています。
【佐藤社長】
「人が近くにいるような環境であったとしても、安心して使える風力発電という新しい価値観を、皆さんのところに提供できるというのが一つの目標」

「教授と助教」「取締役と社長」で取り組む世界初の風力発電。渦の力で回す新たなクリーンエネルギーが、私たちの街で見られる日も近いかもしれません。
